虚構推理 鋼人七瀬 感想

 講談社ノベルスから発売中の虚構推理 鋼人七瀬の感想です。著者は城平京。

 いちおうミステリ枠だと思いますが、よくある名探偵が殺人事件を解決していくタイプのミステリを期待すると大きく裏切られますので注意が必要です。著者の作品を読んだことがあればわかると思いますが、論理的なファンタジーといった感じの作品です。

 基本的に、著者独特の論理を受け入れるかどうかの作品であり、『肝となるトリック』のような致命的なネタバレはないと思いますが、念のため長文感想は隠しておきます。
 
 何も問題ないという方は、続きを読むからどうぞ。

 さて、本作は虚構を虚構で塗りつぶすといったものなのですが、言葉にしてもいまいちイメージが湧かないと思いますので、具体的に書きます。

 内容的には、不特定多数の人間の想像力によって生まれた怪物退治がメインです。「みんなが最強だと思ってる限り最強」という前提を何とか覆さない限り、その怪物は倒せないという設定。大多数が最強と思ってれば最強なので、それらを「怪物は最強の存在などではない」という方向に誘導させて、不特定多数の人間のイメージを塗り替えていくことが物語の目的です。嘘の存在に対し、合理的な嘘をぶつけて相殺させていくわけですね。ただし、情報はネットを通して随時広まっていきますが、思い通りに誘導できるとは限りません。論理性も必要ですが、当然、雰囲気とか、その場の勢いも必要になってきます。本編では議会の採決と似ていると表現していますね。要は、上限不明の投票みたいなもんです。

 想像力の産物という設定にアイドルを絡ませたのは上手いですね。アイドルというのは、テレビや雑誌を通して、顔や声は知っていても、本当の中身はよくわからない偶像の存在です。なので、架空のものとして仕上げていくのに最適なわけです。今作では、そこにどんどん設定を付加していって、元々あった偶像を別な偶像にしていく、といった作業を積み重ねていきます。もちろん、そこから生まれた偶像が実像かどうかなんて、どうでもいいわけです。もっともらしい理屈があれば、人は勝手に新たな想像をし、勝手な偶像を生み出します。その正誤は誰にもわからないし、わかる必要もない。特に、想像の対象が亡くなってしまっているならなおさらです。答えはそれぞれの心の中に、という結論で終わります。
 たとえ設定は非科学的でも、これらの過程は極めて論理的であり、そこに今作の面白さがあります。まあ、実際はほとんど思考ゲームのようなものであり、退屈に感じる人もいるでしょうし、人によっては全然楽しめないと思います。

 メインキャラには人魚とくだんの肉を食べた超能力プラス不死身の肉体を持った反則気味なキャラ出てきますが、ビックリするほど活躍せず、拍子抜けします。クセのあるキャラクターが多い割に、淡白に使ってしまっているところももったいない。この編はまだまだ改良の余地があります。が、そうすると論理を積み立てていくシーンが疎かになってしまう可能性があり、バランスをとるのはなかなか難しそう。まあ、それにしても、もうちょっと読者へのサービスシーンがあってもいいんでないかなと思います。


 個人的には、鋼鉄番長の密室を彷彿とさせる作りであり、私はあの作品がかなり気に入っているので、今作もとても楽しめました。そんなに鋼が好きなのかといいたくなるような、独特なネーミングセンスも健在。スパイラルにあったエンタメ性が足りないとか、キャラ立てが少し甘いとか、気になるところもありますが、久しぶりに城平京の小説が読めたので、十分満足です。
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