FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セカンドノベル

 セカンドノベルとは、コアなノベルゲーム好きの層で人気を誇る、深沢豊というシナリオライターによってディレクション・監修されたPSP用ノベルゲームです。

 同ライターにより公開されている『忘れものと落とし物』という全年齢対象の作品がネットからDLできるので、ライターがどのような物語を作るタイプなのか知りたい方は、こちらを先にプレイしてみるのもよいかと思います(ちなみに、今作は無料でDLすることができますが、コンセプトしてはフリーゲームというわけではありません)。

 なお、ほかに過去に発売されている『書淫、或いは失われた夢の物語。』という18禁の作品もありますが、2010年現在数万円ものプレミア価格がついているため未プレイの状態です。どのような作品なのかもよくわかっていません。


 ここからセカンドノベルの紹介です。今作はゲームシステムがシナリオと密接に関わっているので、そこを絡めて感想を書きます。

 このゲームは、かつてヒロインが創造したある物語を、一から作り上げていくことが目的です。彼女の記憶に眠る物語を少しずつ拾い上げていき、最後まで完成させることが最終目的となります。これはヒロインである彩野の設定に関わってきます。普通だったら、長時間かけて少しずつ思い出していけばそれで済む話なんですが、ヒロインは過去に自殺未遂をしたことが原因で、約15分程度しか新しい記憶を維持できないという障害を脳に負っています。ヒロインは過去を思い出すことができても、記憶を維持することができない。また、これから覚えていく記憶は全て忘れてしまう(=新しい記憶を覚えられない)。記憶を喪失したわけではないので、忘れている記憶を思い出すことはできますが、15分が過ぎてしまえば彼女は一度思い出した記憶を忘れてしまいます。ヒロインは物語を忘却しているため、15分ごとに一から思い出してもらうことになる。しかし、それをただ繰り返していっても、時間の問題で絶対に結末へと至ることはできない。そのため、主人公は素早くヒロインに物語の展開を思い出してもらうために、物語のあらすじを作成しつつ物語を聞きだしていくことになります。ヒロインの思い出した物語がどのような結末を迎えるのか、主人公とヒロインが一緒に探っていく、というのが今作のゲーム展開です。

 システムの印象は、逆転裁判に近いといえばいいでしょうか。プレイヤーは、ヒロインである綾野があらすじを作るために必要な言葉や人物をキーワードとして提示しながら、ゲームを進行していきます。難易度はさほど高くなく、少し詰まったらヒントを得られる構成になっているので、まず攻略できないということはないでしょう(何箇所か難しいところがありますが、真面目に物語を読めばどうすればよいか気づけると思います)。難易度はあってないようなもので、攻略に悩むことはほぼなかったし、そのほとんどは作業のようなものでしたが、しかし詰まらないというわけではなく、不思議とゲームを進めたくなる魅力がありました。

 システムの上の不満はボリュームの調整がいまいちだったことでしょうか。操作性やレスポンスが若干悪かった印象もありますが、ストレスを感じるほどではなかったし、それほど気にならなかったです。


 ここまでがネタバレを含まない感想です。ここから先は、ネタバレを含む感想になりますので、未プレイの方はご注意ください。

 シナリオについて簡単に説明します。ストーリーの流れは冒頭の説明通りで、物語の全貌を把握することが目的になります。ストーリーが進んでいくにつれて、物語の内容は徐々に明らかになっていき、なぜ綾野がこの物語を作った、そしてなぜ物語は語られなければならないのかがわかっていきますが、自殺未遂をした理由や、誰が誰を好きだったのかがはっきりせず、最後まで謎の中なので、消化不良の感があります。真相が全て明らかにならないと満足できない人には不満かもしれません。あと、全ての意図を説明してもらえないので、何がいいたかったのかよくわからない部分が残ってしまいます。
 
 今作の登場人物は全て合わせても2桁に届くかどうかというところで、主要な登場人物は両手で数えられるくらいです。それくらい狭い世界でのお話です。私は、その中でも、主人公と綾野、それとサクラと千秋が主要な登場人物だと考えています。主人公と綾野は同級生で、サクラは物語に登場する謎の女性、千秋は学校で出会う女の子。さっくりネタバレしますが、千秋とサクラは姉妹で、サクラは綾野が過去に入院していたときに出会っています。綾野は完全にサクラのことを忘れていますが、はっきりいうとここは都合がよすぎかなという印象。

 このゲームでの主人公の立ち位置は傍観者です。綾野が話す『物語』は、アヤノと過去に自殺した彼氏(ということにしておきます)であるユウイチという人物等が主役となる話で、どうやら現実を模倣した作品であるということがわかっていきますが、その物語に主人公は登場しません(ということにしておきます)。主人公は物語に対して無力です。我々プレイヤーも、ゲームを進めていくという立場から物語に干渉することはできますが、物語そのものに触れることができません。これは、主人公とゲームプレイヤーの立ち位置が非常に近しいということを意識させられます。

 今作のテーマは『物語』です。テーマの受け取り方は人それぞれだと思いますが、このテーマ自体は間違いないかと思います。夏の学校を舞台に思い人と語り合うシーンは何かとノスタルジーを感じさせ、わびさびを意識した雰囲気づくりは素晴らしかったですし、OPの残照はその儚い雰囲気を後押しする聞き込むほどによくなる曲でした。『夏』の感じさせ方は抜群にうまかったし、『夏』は今作のひとつのテーマとしてもいいかと思います。

 しかし、やはりライターが一番主張しているのは『物語について』でしょう。作中で散々触れられていることもあり(というよりも、作品のほぼ全てが『物語について』語られていたように思います)、テーマはよく掘り下げられています。ライターの熱意が強く伝わってきました。意欲作といって間違いない。

 ただし、そこにエンタメ性が寄り添っているかどうか、というのはまた別の問題です。

 私がこの作品をやって思ったことは、『とてもよくできているし、深く練り込まれているが、恐らく2度プレイすることないだろう』というものでした。その感想は、プレイ後数週間経った今でも変わりませんし、実際クリア後にセカンドノベルを起動したことはありません。決してつまらなかったわけではありませんが、もう一度プレイしたいとはまったく思わない。プレイヤーにこういった感想を持たせてしまうのは、作品としてはとにかく、ゲームとしては失敗、なのではないかと思います。

 シナリオディレクション・ゲームコンセプトはとてもよくできています。テーマ性については見事の一言です。徹頭徹尾、最後までやりきったと思います。しかし、その代償といってはなんですが、エンタメ性が足りない。ゲーム性はそこそこよかった。さきほど書きましたが、多少の作業感はあったものの、シナリオテーマと深く結びついたゲームシステムには魅力がありました。

 よくないのは、作中で語られる『物語』があまりに平凡すぎて、『物語』そのものの面白さが圧倒的に足りないというところです。それなりに変わった設定はありますが、ゲームの中心にある『物語』があまりにも普通すぎます(これは、作品テーマ上、狙ってそうしたのかもしれませんが……)。かすかに漂う恋愛アドベンチャー要素は、作品の展開上、ほぼ切捨てられてしまいますし、語られる『物語』には惹きつけられるような魅力がなく、ストーリー単体を褒めることができない。とても惜しい作品です。『作品としては』よくできていますが、作中の『物語』が面白くない。つまり、テーマ性とエンタメ性が両立できていません。

 テーマ性だけを求めれば、今作で十分満足できるかもしれませんが、私は両方を求めており、片方だけでは物足りなかった。特に、この作品はもっと先までいけると思えたからこそ、物足りなかった。満足したという気持ちより、残念だという気持ちがかなり強いです。


 以下は余談と推測です。
 
 この作品では執拗に物語とはなんぞや?と述べられます。この作品のテーマは様々な解釈ができますが、一つとしてライターの自分語りが混じってるのではないかと考察できます。

 明確には語られていませんが、恐らくこの作品はライターが過去に発表した『True Color,』のリライトです。『True Color,』とは、ライターが2005年頃に発売を予定していながら、結局発売することができず、事実上無期延期してしまった作品です。HPの情報を見てみればわかりますが、作品情報にセカンドノベルと似通う点がいくつかありますので、今後発売されることもないのではないかと思います。

 作中でのアヤノの物語は、本当はサクラとアヤノの二人で作り上げられたものでした。サクラが作れなかった物語を、綾野に託し、綾野が引き受け、作り足したことで完成しました。つまり、サクラ一人じゃ物語は作れなかった、と。ここでライターは、物語は必ずしも一人で作り上げるものではない、一人で作らなくてもいいのではないかと、多人数での脚本を肯定しているのではないでしょうか。これは、『True Color,』を一人で作り上げることができないままでいたが、テクストを立ち上げて仲間と出会い、ゲームとして作り上げることができたという実感が混じっているのではないかと思います(といったら穿ちすぎかもしれませんが、少なくとも一人では発売できなかったという点だけは間違いないのではないと思ってます。事実深沢氏は何年もかけて『True Color,』を発売できなかったので)。この先、ライターが新しい作品を発表するかわかりませんが、一人で作るということに拘らないつもりなら、きっとこれからもたくさんの場面でライターの名前を見る機会ができることでしょう。

 ただ、だからといって、それを作品のテーマに深く組み込んでしまうのはどうなのかと。

 この作品の要旨を簡単にまとめると、ある女性が作った未完成の『物語』を受け取った女性が『物語』の続きをつくり、さらにそれを主人公(≒ライター)がまとめ直し、女性(≒プレイヤー)に結末を委ねるというものです。『忘れものと落とし物』もそうでしたが、今作でもプレイヤーはゲームの中に含まれてます。このゲームはプレイヤーが参加していることで完成する。これは、ライターとプレイヤーの共同作業だといえます。ある意味、読者を信頼して読者に全てを委ねているんだし、『誰かと一緒に』という考え方は美しいといえないこともない。

 ただ、やはり大事な結論を自分で出さずに投げてしまうのはズルでもあると思います。最後の[『SectionEx2』のあらすじは、あなたが作成しています]という演出はとてもよかった。セカンドノベルというゲームタイトルそのものが、実は大きな意味を持っていて(ここでゲーム内小説の意味もおのずとわかるのではないかと。あれはプロが作ったセカンドノベルです)、プレイヤーに物語の続きを想像/創造してほしいというやり方は面白い。でも、ライターは、自分が説明しなければならない義務があるところまでは、語る必要があったのではないでしょうか。この作品は、最低限やらなければならないところまで、語ることができていないと思います。



 繰り返しになりますが、今作は『作品としては』本当によくできていたと思います。ゲームクリア後も楽しむために、考察する余地を設け、想像/創造させるという可能性を与えるという点で。私が気に入っているゲームにserial experiments lainという作品があり、この作品は現実と空想の境界を取り除いてゲームを現実に持ちこもうとした恐ろしいゲームで、かなり実験的な(タイトルにも含まれていますが)要素の強い作品でしたが、それゆえに強烈な印象を残しました。今作にも、少なからずそういった要因があり、ゲームクリア後にもプレイヤーの現実に影響を与えようとしました。

 こういった挑戦的なコンセプトを含む作品は私の好むところであり、普通に考えればお気に入りになって間違いないのですが、それでも今作がお気に入りだと強くいえないのは、単純に『物語』が面白かったなかったからでしょう。やはり今作の最大の問題は、基礎となる『物語』に魅力が足りなかったことに尽きます。きっと、もっと『物語』が面白ければ、もっと『物語』にプレイヤーをひきつけるような魅力があれば、こうは思わなかったでしょう。重ね重ね、惜しい作品でした。

 以上です。最初はこの作品内に『物語』についても詳しく考察して分析しようと思っていましたが、記憶が失われ始めているのでこの辺りで終えたいと思います。しっかりした考察を書くなら、メモを欠かしてはいけないと痛感しました。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

SAIN455

Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。