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ファミ通文庫 エンタメ大賞受賞作品 感想

 1月に発売されたファミ通文庫・第12回えんため大賞小説部門受賞作品の感想です。以下の文章には、『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? - やのゆい』『表裏世界のソーマキューブ パンツは誰のもの? - 乙姫式』『○×△べーす (1)ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド - 月本一』のネタバレ感想が含まれますので、未読の方はご注意ください。


『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? - やのゆい』
 優秀賞受賞作品。ジャンルは現代を舞台にした学園ファンタジーです。優秀賞なだけあり、三作品の中でも特にテクニカルな作品であり、個人的にも一番気に入りました。
 本編の内容。ある日、主人公―峰倉あすみは虚無僧から悪霊が憑いていると言われる。あまり関わりたくない主人公だったが、このままだと自分の想い人―高柳尚人にも悪影響が及ぶと言われ、しぶしぶ話を聞くことに。主人公は虚無僧からお守りとコンタクトレンズをもらい、そのコンタクトをつけてみると男共が妄想した少女の幻覚が見えるようになってしまう。主人公は、妄想少女たちと交流しながら、想い人と結ばれるために行動し始めるが――?、といった具合。幻覚の少女達は作中で妄想少女といわれてますが、要は中学生男子が想像した理想の女性像のことです。実に気持ち悪い設定といいますか、過去の傷口を抉るような話といいますか、思い当たるふしがあって苦笑いしそうになります。これが女性視点の作品でほっとしてしました。もしも男性視点の話だったら……と思うとぞっとするものがあります。
 感想。まずこの作品はテキストが独特であることが特異な点として挙げられます。タイトルどおり、主人公は中学生の女の子なのですが、当然まだまだ未発達な状態であるため、思考・発言に一貫性がなく、ともすれば支離滅裂とも取れるような行動をとります。感情の起伏が激しく、ころころ意見や発言が変わるところはまさに子供そのものです。思春期の頃は感情の制御をするのが困難で、なかなか思い通りのことを言えなかったり、逆に言いたくないことを言ってしまったりすることがあるものですが、そういった思春期特有の独特さを上手に表現しています(ここを子供すぎてウザったいと感じてしまうと、この作品の大半は楽しめないと思います)。また、読んでて引っかったところに対してきちんと理由を用意していた点も好印象でした。主人公が高柳に対して無条件で恋心を向けているところと、一部の発言だけ丁寧語になっていることが引っかったのですが、どちらもきちんと理由が説明されています。
 この作品のテーマについては、色々言えると思いますが、わかりやすくいえばやはり『成長』がテーマだと思います。主人公は、最後に自分に取り憑いた悪霊の正体がなんだったのかに気づきました。これは自分を客観的に見れるようになるまで意識が成長したということだと思います。自分の恋を実らせることにしか目が行かなかった主人公が、周りの人に目を配れるようになり、その中での自分がどのような立ち位置にあるのか気づく。大人になれば当たり前なんですが、この年齢の子にとっては非常に大切なことです。もちろん、まだまだ成長過程にあるのは間違いないですし、課題はたくさんありますが、今回一歩進んだ主人公が今後どのように成長していくのか楽しみです。
 以上感想終わり。今中学生の子にも大人になった人にも勧めたい作品です。多少乙女チックな展開ではありますが、とても面白い作品でした。


『表裏世界のソーマキューブ パンツは誰のもの? - 乙姫式』
 特別賞受賞作品。ジャンルは異世界が舞台のドタバタ学園魔法ファンタジー。内容は、道端でパンツを拾った主人公が、持ち主を見つけてどうやって返そうか悩んでいるうちに、なりゆきで世界を救うことになる、という一見しただけでもわかる不条理系の話です。主人公はよくいるワケありのモテモテ系で、ヒロイン2名が結構過激。赤と青の子が終始暴走しており、正直にいってしまえば人間性を感じなかったため、あまり好みではありませんでした。残り1名は不思議ちゃん枠です。基本的にはコミカルな色を出して進めていますが、あまり主人公がはっちゃけているキャラではないので、ギャグ作品とまではいきません。また、最後のほうで明かされる世界設定はなかなかハードで重苦しく、シリアスな部分はきちんとシリアスに締めていました。核心をバラしてしまうと楽しさが半減してしまいそうなので伏せておきますが、少女たちの設定は面白かったと思います。
 不満点としては、やたらと設定の説明シーンが多く、いまいち話のテンポがよくなかったのと、それの弊害なのかわかりませんが、物語の展開のスピードが少し遅いというか、1巻を通してほとんど時間が過ぎていないところが気になりました。世界観の裏設定は面白かったのですが、魔法関係の設定はもう少し削ってもよかったのではないかと。あとはパンツパンツ言い過ぎで冗長すぎるところが欠点。設定については、今回で土台を整えたと考えれば、これから先の利点になるかもしれませんが……次回があるなら、生かしてほしいところです。


『○×△べーす (1)ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド - 月本一』
 特別賞受賞作品。タイトルが異彩を放っていますが、特段グロい内容でもなんでもなく、純粋な学生野球モノです。タイトルからはなかなか想像できませんが、ロウきゅーぶに続くスポ根ラノベでした。内容は、中学時代に野球で挫折した主人公が、廃部直前の高校野球部で復活する話。概ね当たり障りのない王道な展開で、テキスト・キャラクターともにクセがないため、詰まることなくさくさく読めました。野球部が舞台なので、登場キャラはそこそこいます。展開上の都合か、スポットがあたるキャラクターとあたらないキャラクターにかなり差が出ていますが、今回目立たなかったキャラは次巻以降で掘り下げてほしい。
 不満点、もとい今後特に改善してほしいところはコメディパートのギャグセンスですね。タイトルにも使われている主将・中村の「寝癖ギャグ」は全然面白くないし、野球部が廃部に追い込まれることになった理由が「校長の金魚を死なせたこと」なのは斬新すぎてついていけません。こればっかりは趣味嗜好の問題なのかもしれないですが……せっかく燃え要素になる要素なはずなのに、全く緊迫感がなく盛り上がらなかった。やってる当人たちは本気なのかもしれませんが……これなら、「先輩がタバコを吸ったせいで廃部に追い込まれた」的な古典的でもわかりやすい展開のほうがよかった。ナイーブな主人公や双子の姉との才能の差に悩むヒロインの描写は上手かったですし、学園生活の描写も悪くなかったと思いますので、今後の課題にしてほしいと思います。


 以上。どれも新人の作品だと思えば水準は保てている作品でした。今月末にもえんため大賞受賞作品が発売される予定なので、縁があればそちらも読んでみたいと思います。
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Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

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