仙石寛子 『君の足跡はバラ色』 感想

〇雑感
実は、著者の作品は単行本として発売されているものは全て読んでいるのだが、中でもこの作品が一番よくできていると思う。ただ、読んでて楽しい漫画なのかと聞かれると、案外そうでもないというのが難しいところで、他人には少々オススメしづらい。凄い失礼な話だと思うが、読んだときに最初に思い浮かんだのは「これは売れなさそうだ……」というものであり、漫画としてのキャッチ―さやわかりやすさからはちょっと離れたところにある作品だと思う。ただ、自分にとってはとてもよい物語であったことには違いなく、たぶん最上級の理想像が描かれていた。

設定自体は漫画としては定番の男女の見た目と中身が入れ替わるというもの。そして、入れ替わった二人が、お互いの想いを告白し、付き合うことになるという実に王道なストーリー。ただし、変わっているのは、男の体に入った女の子が、男の体のまま、女の体になっている男の子のことを好きになる、という点。つまり、彼女は見た目は「自分の姿をしている」彼のことを好きになるのである。そしてそれにつられるように、男の子は男の子の見た目をした彼女のことを好きになってしまう。

見た目男の女の子が、女の姿をした男の子を好きになり、見た目女の男の子が、男の姿をした女の子を好きになるという、倒錯している設定だが、別にナルシズムや同性愛を描こうとしているわけではない。この作品が描いているのは、人を好きになるということはどういうことなのか、という極めてプリミティブな命題である。自分は相手のどういったところが好きなのか。相手の性別が違ったら好きになれなかったのか。自分が違う性別だったらどうだったのか。自分と同性だったのなら。相手の性別は好きという感情を左右させるのか。たとえ今好きだったとして、また性別が逆転してしまったら、同じように好きになれるのか。

元に戻ったら
今の気持ちはどこに行くんだろう……



それらの問いについて、論理的に全ての感情に説明がつけられているわけじゃない。むしろ「なぜ」という部分の説明は不足していて、感覚的に何となくまとめられてしまった感が強い。最後に二人の性別が元に戻らなかったのも、少し釈然としない部分がある。でも、そういうこだわりこそが余計だということなのかもしれない。きっと、二人の性別はどっちでもよかったのだ。二人はお互いに女の子としても好きで、男の子としても好きで、そのことにそれ以上の理由は必要ない。一度でも確信が持てたのなら、それで十分だろう。

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