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三秋縋 『君が電話をかけていた場所』『僕が電話をかけていた場所』 感想

〇雑感
タイトルからは全くそうとわからないが、れっきとした続き物で、『君~』が上、『僕~』が下、という上下巻の構成になっている。どちらかが外伝とか、並行的な群像劇になっているとか、とりあえずどちらか一冊でお話が完結しているというのならとにかく、『君~』では全く物語は完結していないので、この売り方はかなり酷い。強い演出的な意味があるわけでもないし、もっとわかりやすいタイトルをつけてほしい。

内容は途中まではかなりよかった。というか、上巻の『君~』まではよかったと思っていた。多少後ろ向きなところはあるし、絶妙に拗らせている感じはするが、過去作品ほどには捻くれていないし、アクも少なめなので、ひょっとしたら作者の中で最もよい作品になるのでは、と思っていたはずなのだが。

概要。主人公の顔には誰もが思わず眉を顰めたくなるような醜い痣があり、そのことが常に主人公の劣等感に駆り立てて、自暴自棄な生き方を強いていた。ある日、無人の公衆電話に電話がかかってきて、つい好奇心に負けてその電話に出ると、電話の女は何の前置きもなく、貴方には諦めきれない恋があるはずだ、と唐突に語りかけてくる。主人公は馬鹿らしくなり、その場ではその電話に取り合わないが、その言葉を反駁しているうちに、少年期の記憶を思い出していく。昔、自分の醜い痣のことを素敵だと言ってくれた少女のことを。

主人公は、3か月後にまたかかってきた電話に出て、確かに女の質問は正しかった、と観念して認める。そして、その女の誘惑に乗ってしまうことになる。その顔の痣を消してやるから、その子と付き合えるかどうか、自分と賭けをしないか、という誘惑に。翌日、高校に登校した彼は、周囲の反応が変なことを訝しみ、自分の顔を見たことで痣がなくなっていることに気づく。主人公は混乱の中、彼女に会いに行くかどうかを悩んでいたが、まさかの自殺未遂の現場で偶然彼女と再会することになる。なぜ彼女が自殺未遂などを?動揺する主人公が彼女に視線を向けると、そこには見慣れたあの痣があって――、という展開。

痣のある彼女を僕が愛せるかどうかは問題ではない。痣のない僕を彼女が愛せるかどうかが問題なのだ。

僕は初鹿野のどんなところが好きだったのだろう?もしかすると僕は、自分に優しくしてくれる人間なら誰でもよかったのかもしれない。現に今、荻上千草という女の子にも少しずつ惹かれ始めているではないか。初鹿野を口説く暇があるなら、永洞やその友人たちと過ごす時間に充てたいと思っているではないか。


この辺りの、自分さえよくなれば何事も上手くいくというわけではないという皮肉や、同一の他者に対する好意がどんな環境であっても同様に生まれるのかどうかを分析している過程を読んでいる時は、確かに面白かった。痣があったからダメだったのか、痣がなくなれば何もかもうまくいくのか、痣がなければ自分は初鹿野を好きにならなかったのか。言い訳に使っているコンプレックスというのは、実は何かを正当化する理由にはならないのではないか。これらの検証は、自分を変えられるのはいつでも自分だけである、という一連の主張とつながるものがあると思っていたから、どのような結論になるのかを興味深く追っていた。

しかし、後半からはなぜ初鹿野は引きこもったのかとか、千草はなぜ死ぬことになったのかとか、そういったドラマの謎解きメインの方向性になっていってしまい、しかもその畳み方が強引過ぎてついていけず、自分の求めている方向性とは全く違うところにいってしまった。特に初鹿野が記憶喪失になるくだりは、かなり作為的に物語が作られていて、どうにも好みと違った。そういう最後のどんでん返し要素がウケている部分もあるようなので、ついついギミックを仕込みたくなる気持ちはわからないでもないが、無理に読者をびっくりさせてやろう、予想もつかない結末を用意してやろう、ということにやっきになるのはやめたほうがいいのではないか。下巻はドラマの種明かしに夢中になっていて、せっかくの主題から焦点がぼやけてしまっていて、非常に不満だった。

あともうちょっとだけ自重してほしいと思うのが、将来の展開に対する予防線を張りすぎることである。創作者は、自分が神の立場で物語を作っているという点について十分留意しなければならないが、作者は気軽に特権を行使しずぎている。少女漫画などで特に顕著だと思っているが、作者も「あんなことになるなんて、この時の自分は考えてもいなかった」「彼女がこの時どんなことを考えていた、この時の自分は全くわかっていなかった」みたいな、「ここ注意してくださいね、重要ですからね」的な示唆を多用しすぎで鬱陶しい。

最後に一つだけ。いい加減、地の文でやれやれを多用するのは勘弁してほしい。ファンサービスのつもりなのだろうか。やれやれと出てくるたびに、やれやれ、またやれやれか、やれやれ、という気持ちになって笑ってしまうのでやめてほしい。

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