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三秋縋 『スターティング・オーヴァー』 感想

〇雑感
同著者による『三日間の幸福』がとてもよかったので、残りの既作品も全て読んでみることにした。この『スターティング・オーヴァー』は著者の処女作にあたる。事前評判は芳しくなかったが、これだけ飛ばすというのもどうかと思い、少し悩んだあと、結局読むことにした。

前半部分の出来については、率直に言ってかなりよくない。なんといってもテキストがよくない。悪文というわけではなく、むしろ読みやすい方なので、筆力はあるのだろうということは感じ取れるが、なんにせよ自分の感性に合わない。他者を見下し、自分だけが優れているんだと勘違いしている、自尊心だけは一丁前の自己陶酔に満ちた自分語り調のテキストには辟易する。斜に構えたすかした文章からは、ちょっと読んでて恥ずかしくなるくらい村上春樹からの影響が感じられるが、残念なことに比較にならないくらい質が劣っているので、評価することはできない。これがもっと平坦な、個性のないテキストで書かれていれば、もうちょっと読後感は違ったと思う。

物語の設定自体はよくあるループもので、20歳の意識を持った人間が10歳から人生をやり直すというものだが、ちょっと変わっているのは、よくあるフィクションであれば自分の経験や知識を生かしてより充実した人生を満喫するだろうところを、「僕の前回の人生は、無二の親友がいて最高の彼女がいて可愛い妹がいて、とっても充実していたし、特に変える必要のあるところなんてないね、前回と同様の生き方をなぞって同じ人生を送ってやろう、ふっ」という感じで、オタや暗い人生を送ってきた読者からすれば癇に障ることこのうえない人間性全開でリスタートを迎えるところだろう。もちろんかなり悪意のある書き方をしているが、実際そんな感じで終始「(笑)」が語尾に付きまとうノリで自分語りしているので、一度読んだ人なら確かにこんな感じかもしれない、と同意してくれると思う。

主人公は子どもにまじりながら生活することの苦痛を味わいながらも、前回と同じような人生をなぞりつつ、意気揚々と彼女に告白をするも、なぜか前回のように付き合うことはできず、哀れにも振られてしまう。その後は一転、前回の煌びやかで充実した人生とは異なり、友達がいない、彼女がいない、家族仲も最悪という底辺人生を送ることになってしまう。

この「満たされた人生を送ることができるかどうかは紙一重で、その人の在り方次第なんですよ」と言わんばかりの説教臭い展開も、実はそんなに悪くないと思っているが、主人公が主観時間で30年近く生きている人物とは到底思えないただの自意識過剰なクソガキというところがどうしてもネックになる。この後に主人公がとっている行動もまたキモく、元カノ(仮)に執念深く粘着し続けたり、元カノ(仮)にできたかつての自分そっくりの恋人を殺そうとストーカーしてみたり、人としての魅力を一切感じない人物として描かれているのがつらい。

作中で肝となるトリックについては、ループしているのは主人公だけじゃないんじゃないの、と簡単に予測できてしまい、実は主人公の代役になった彼や彼女もループしていて、一周目は主人公と違ってとても辛い人生を送ってきていて、実は主人公が何不自由なく暮らすための犠牲者だったんじゃないか、くらいまでは考えていたので、結構肩透かしだった。

最後の取って付けたような主人公と一緒にループしていた彼女がくっつくという展開にもあまり納得してなくて、お互いがお互いの存在を見下すことで今まで生きてこれたのだから実質相思相愛だったよね!みたいな結論は流石に安易すぎたように思う。ただ、サンタの姿で多少自棄になりながらメリークリスマス!と叫ぶ姿には吹っ切れた明るさがあってよかった。今までの人生とは全く違う、明るく楽しい人生を送れるかどうかなんてのは、結局その人の心持ち次第であるということ。この思想は、「バカは死ぬ直前には治るだろう」という『三日間の幸福』のテーマに通じている。

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