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冲方丁 『マルドゥック・アノニマス 3巻』 感想

〇雑感
相変わらず、読み始めてからの没入感は素晴らしいものがある。一度読みだしたらもう止まらない。実は2巻を読み終えてから既に1年半も経過していているが、それだけ期間が空いてしまったということをほとんど感じさせることなく、すぐにこの世界観に浸ることができた。

物語は、ついに第一巻冒頭のガス室へたどり着くことになる。これまで散々予防線が張られていたこともあり、中盤のハンターらクインテッドに対して包囲網を築いて反撃の狼煙をあげていくという過程には一切の希望を感じなかったし、そう事がうまく運ぶはずはないだろうという予断があったため、イースターズオフィスがかき集めたの戦力が瓦解していく様を、これまでのウフコックと同じように、匿名の傍観者としてただ無力に眺め、大失敗に終わった反攻作戦の結果を諦念とともに当然のように受け止めてしまった。

ウフコックは、予めその事実が決まっていたとおり、ついにハンターの手に落ち、共感と均一化を強要する針を刺されてしまう。私はてっきり、ウフコックが(読者同様に)抗いようもなくハンターへの同調を深めていった結果、積極的にせよ消極的にせよ、ウフコック自身が少なからずそれを望んだことで針を刺されてしまい、しかしそれでも濫用への嫌悪から自死を選びガス室へと篭った、という流れになるのだろうと思っていたので、ハンターの執念という要因はあれど、普通に捕まって正体が暴かれてしまう、という流れにはちょっと物足りなさがあった。ここはもっともっとドラマティックな展開でもよかった、と思う。

ウフコックの終わりが描かれる物語だということは承知していたし、アノニマスが明るい物語になるとは思っていなかったし、きっと救いのない終わりを迎えるのだろうとは思っていたが、それにしたってウフコックに訪れたのはあまりにも悲惨な現実だった。ウフコックには、夥しい無念を抱えたまま匿名者として潔く死ぬか、ハンターへの共感に溺れ彼に濫用されるかしか選択の余地がなく、いずれにせよ絶望しか残されていない。

そんな虚無と絶望が漂う雰囲気の中に現れたバロットは、きっと死刑執行人のようなものだろうと思っていた。後戻りができなくなったウフコックを、優しく見送ってあげるために再登場したのだろうと。辛く苦しい戦いを続けてきたウフコックへの、せめてもの慈悲なのだろうと。

これがもう完全に読み違いだった。まさか人並にティーンエイジャーとしての青春を謳歌しているバロットが、再び主役として返り咲き、ウフコックとのコンビを再結成しようとするなんて、思いもしなかった。これまで暗く重く救いのなかった展開は一体なんだったのかと思うほどの方向転換。清々しいほどに私の予想を裏切ってくれた。「私が、あなたを正しく使って見せるから」。この短い一言に秘められた意思と信念の力強さが、ひょっとしらまだ希望のある未来がありうるのではないか、ということを予感させてくれる。

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