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谷川ニコ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』感想

〇前書き
もこっちの変わらなさっぷりに自分の過去を投影してしまうのがつらくて、ご多分にもれず途中で一回リタイアしてしまっていたのですが、最近作品の方向性が変わってきているという噂を聞いて、再度手を出してみました。私は6巻で購入をストップしてしまいましたが、そのあと少ししてから路線が変わっていったようです。結果的には、口コミを信じて復帰してみてよかったと思います。


〇1~7巻まで
スペックは低いのに自尊心だけがいたずらに旺盛で、他者を見下しながら生きているぼっち女の「黒木智子」こと「もこっち」が、自意識過剰な行動をとっては事故ったり滑ったりして恥をかいている様を面白おかしく痛々しく描いている日常系漫画です。あるあるネタへの共感ではなく、「普通そんなことしねーよ」と引き気味のツッコミをいれながら「でもちょっとはわかるかもしれない」という微妙な感覚を楽しむ漫画であり、人によっては何が楽しいのか全くわからないだろうし、その痛々しさにただドン引きする人もいると思います。もこっち以外の人は良くも悪くも普通の人が多く、表立って疎外してくる人もいません(これはそもそも彼女の存在があまり認識されていないから、だと思いますが)し、いたたまれなさが際立ちます。ただ皆が彼女に対して無関心なだけであり、ある意味とても残酷で冷たい世界観かもしれません。しかし、もこっちがぼっちなのは割と自業自得なところも大きいので、安易に同情もできない。自分にも悪いところがあるんじゃないか、といった自省の念をこれっぽっちも持たないもこっちの生き様は、何とも言えずクるものがあります。


〇修学旅行編(8~9巻)
先にも書いたとおり、私は6巻で「もういいかな……」と思って読むのをやめてしまいましたが、8巻からは少し作品の方向性が変わり始めます。これまでもこっちと関わりを持っていたのは家族と唯一の友達のゆうちゃん(+その他少数)くらいで、単独行動時の空回りっぷりを眺めては愉快な気持ちになったり沈痛な気持ちになったりということを繰り返してきていましたが、あるイベントをきっかきにしてまともな学生生活、つまりは集団行動が描かれるようになります。それがどこの学校にもあるであろう強制イベント、修学旅行です。

デリカシー0(もこっち視点)の担任によってクラスの余りもの集団の班長にされたもこっちは、意外なことに他者との交流に積極的に動くことを決意。修学旅行のルートを決めるために旅先を調べてみたり、班員となったクラスメイトに気を使ってみたり(もこっちなりに)、集団行動も頑張ってみたり(もこっちなりに)と、これまでとは段違いのバイタリティを見せつけます。いや一般人からすると当たり前のことを当たり前のようにやっているだけで、しかもやっぱりぼっち思想的行動はしているので、そういうところは変わらず痛々しいのですが……。移動中の新幹線で居場所のなさに孤独を感じたり、班員が友達同士で行動すると思って声もかけずに単独行動をとったり(この勘違い+思い込みがこの作品の魅力の一つだとは思いますが)、思い当たるところがあって苦しくなります。

ともあれ、この修学旅行編を経て、この作品は方向性を変えていきます。具体的には、これまでは全く描かれなかった同級生が登場するようになり、もこっちの愉快な仲間たちとして物語に介入してくるようになります。まあ、悪く言うとテコ入れですね。初期の方向性だけが好きで、もこっちにはずっとぼっちでい続けてほしかった読者も中にはいたのかもしれませんが(っていうか本当は作者が一番そうしたかったんじゃないかと思いますが)、もこっちの痛い行動だけを眺め続けるのにも限界がきていたでしょうし、実際私のようにドロップアウトしてしまった人がかなりの数いたんじゃないかと思われますので、妥当な落としどころだったのではないでしょうか。


〇修学旅行以降(9~11巻)
修学旅行編後、もこっちの学校生活には大きな変化が現れます。それは同級生から話しかけられ、同級生に話しかける、ということ。大多数の人からすると至極普通のことなんですが、全く他人と話さず学校が終わる、という経験をしたことがある人からすれば、信じられないくらいの進歩です。修学旅行で縁を結んだ修学旅行組のゆりちゃん、吉田さん、まこっち、絵文字の4人と、これまでもちょくちょくもこっちに声をかけてきたリア充グループの根元さんことネモが主要キャラとして加えられ、少しずつ物語の輪を広げていく。

多くの読者がそうなんじゃないかと思いますが、修学旅行以降のお話では特に11巻の109話、雪の日の学校に行くエピソードが頭一つ抜けて好きですね。最後のもこっちの「行かなきゃよかった、とも思わないけど……」という独白が、彼女自身の変化を感じられてすごくいい。これを見て、12巻から先も読み続けようと決めました。


〇卒業式とその後(12巻)
学校ものの定番の卒業式ですが、こう、露骨に泣かせにくるわけではなく、少ししんみりとした空気を味合わながら、きれいに終わらせてきた巧さに感心しました。もこっちと生徒会長とのつながりはとても緩いものではあれど、学校生活の縁なんて実際そこまで劇的なものにはならないわけで。裏表紙は必見で、大したことはしていないのに、無言の1シーンがじわじわと効いてきます。

「あ……あの私になんかやってほしいこととかあります?」


もこっちは間違いなくデリカシーのないおバカですが、たまに出る無意識的な、あまり深く考えてなさそうな何気ない行動や発言の中には、他人を思いやる優しさ、みたいなものが感じられたりします。この一言がまさにそれ。無数の恥を積み重ねてきた強メンタルだからこそ、普通なら恥ずかしいと思えるようなことでもさも当然のようにやり遂げられる、のかもしれない。自分には絶対言えなさそうなセリフではありますが、何もせずに終わっていればきっと後悔していたのでしょうから、後悔せずに見送ることができたもこっちが少しだけうらやましい。もこっちはこれを糧として、新入生やらほかの同級生やらに何かをしてあげることができるのか、気になるところもありますが、なんにせよ漫画としてはこれ以上はないほどきれいな描き方でした。

もこっちの変化は同級生との関わり方においても顕著で、ゆうちゃんにはきれいな魚を釣ったと見せかけた写真を送っているのに、ゆりちゃんとまこっちには実際に釣った腐った魚をどや顔で送っているのが面白い。もこっち的には、二人になら別に取り繕わなくても大丈夫だろう、という見栄の心がなくなってきて、肩の力が抜けてきたという描写だと思います。ゆうちゃんは大事にしている(あるいはいいところを見せようとしている)、2人には気安く接することができる、というような心境が無言の一コマから想像できます。モノローグが少しずつ減ってきているから、コマをちゃんと読んで意味を理解しないと伝わらなくなってきている反面、読み応えが出てきていて非常によいです。

あとはなんといってもゆりちゃんが本当にかわいい(重要)。打ち上げの後の電車待ちしているときに「次のにするからもうちょっとだけ一緒にしていい?」って甘えてみたり、新しいクラスにまこっちと吉田さんともこっちがいて内心喜んでいるのを口元を押さえて隠そうしてみたり、素直じゃないところが超かわいい。巻末の119別視点の書下ろしも最高で、「まあ私はこうやって4人でいれれば別にいいんだけどね……」の一言が強すぎる。親しい人たちと傍にいられるだけで満足、というのは小さな願いのように思えますが、彼女の性格からすると「ありのままの自分を受け入れてほしい」という、実は非常に贅沢な願いなんですね。そして今の4人ならそれができると思っている。そりゃ、吉田さんもころっと落とされてしまうというものです。

ちなみに、もこっちが「うっせーキバ子、歯矯正すんぞ……」って言っている時に、ちょっとすごい顔で凝視した後にこらえきれず笑ってしまったのは、自分と同じように内気な性格だと思っていたもこっちがそんな強気な発言をしていてびっくりした、というのと確かに八重歯だよな、と思ってギャップとそのストレートさに不意を突かれてしまったからでしょう。ゆりちゃんは言葉数が少ないし、口下手で口喧嘩とか得意じゃなさそうだから、面白い悪口を代弁してくれたもこっちへのリスペクトが高まるのはよくわかります。


〇遠足編と最新話(130話)までの感想
卒業式である程度もこっちの内面に区切りがついたからなのか、どんどんサブキャラ同士の関係性の掘り下げに焦点が移っていっています。魅力的なキャラがどんどん増えていくのは好ましいことですが、中でもやはりゆりちゃんは格別で、彼女の描かれ方はあまりにもリアルすぎて、もこっちとは別の意味で苦しくなります。もこっちはきっかけがあれば変われるだろうに、結局は変われていないという現実がつらかったが、ゆりちゃんは行動そのものに自分を重ねてしまってつらくなる。最新話でゆりちゃんが一人でいなくなってしまったのは、もこっちが修学旅行の最終日に単独行動しようとしたのとほとんど同じ理由だと思います。自分とはあまり親しくない人が自分の知り合いの傍で笑っている、というただそれだけの理由で居心地が悪くなり、その場からいなくなりたくなる。親しい人同士じゃないと、傍にいることもできない。これがわかりすぎてつらい。

「好きでもないけど、嫌いでもない」。だから、できれば私(たち)には関わらないで、他の人たちと仲良くやってほしい、というのがネモに向けられたゆりちゃんの本音なんじゃないでしょうか。ネモはゆりちゃんと仲良くしたいと思っているかもしれないけど、ゆりちゃんは多分そう思っていない。ネモに声をかけられたときのゆりちゃんの表情が正面から描かれていないのがまた演出としてよく効いていて、邪推力を刺激してくれます。

ゆりちゃんのネモに対する「……バカだな」発言には色々解釈の余地がありそうなのですが、私はネモには同調したと見せかけつつ、その実は他人には理解できない裏の意図を含んだセリフだと思っていて、「自分のことを友人だと思ってくれているから、特別だと思ってくれているからキーホルダーをくれたんだと思ったけど、よく考えたらそんなはずないよな。一人で喜んじゃって、私ってバカだな」という自嘲の意を含んだ発言じゃないかと思っています(考えすぎ)。そういう意味だとすれば、ネモからすれば多少ぶっちゃけ話ができたと思っているのかもしれないが、全然分かり合えていないし、本音で語り合えていないわけです。そもそも、ゆりちゃんは(私は気づいていませんでしたが)途中からもこっちからもらったキーホルダーを外していて、ネモへの仲間意識というか、仲良くしようという雰囲気を一切出していないんですね。それがまたつらい。

ネモについては、かなり強い信念を持っている人物だとは思われますが、クラス替えの時に声優の夢を告白した時を見ればわかるように、決して怖いものがないわけではないはずなので、ゆりちゃんとの接触も内心ドキドキしてたんじゃないでしょうか。仮面をかぶりながら周囲に同調しながら生きてきたその息苦しさを思えば、多少強引な行動をとる理由もわからないではないし、その努力が報われればいいとは思いますが、ゆりちゃんの塩対応っぷりは徹底しているところがあるので、前途は多難。まあ、既存のグループに入り込むんだったら、もうちょっと相手のリアクションみながらでもよかったんじゃないかな……と第三者視点からは思ってしまいますが、ネモには身を引く選択肢がない以上、他人の好悪の感情を見ながら行動する余裕はなかったんだろうとは思います。

さもするとゆりちゃん的には嫌な記憶ばかりが残って遠足終了という感じですが、ただ最後にはみんながこの遠足を楽しかったと思っている(でいいんですよね先生……?)シーンが描かれて終わっていたので、すべてが楽しかったわけではないかもしれないけど、いいこともあったと思えている分、まだ救いがありました。ゆりちゃんはネモに好意を持てず、ネモはそれを知りながら今後も積極的に絡んでいきそうなので、これまでの関係性とは変わっていってしまうような気配がありますが、いったいどう調理していくつもりなのか、実に楽しみです。


〇キバ子について
今後も読み続けていくつもりなので、次巻以降の感想を書くことがあれば嫌でも触れることになると思います、たぶん。しかし、キバ子地獄編ってコピー、面白すぎだろう……。


〇終わり
軽く感想を書くだけのつもりだったのに、書いても書いても終わらなくて、結局めちゃくちゃ長くなりました。なんで5000字も書いてるんだろう……。なんというか、一度読むのをやめた作品にこれほどまでハマり直すことになろうとは思ってもいませんでした。次の新刊出るのは秋だし、次回の更新は3週間後だし、悶々としてしまって仕方ない。10巻のあとがきをみる感じだと高校生編を書いて終わりにするつもりっぽいですが、どうせなら卒業式からの卒業旅行⇒大学編と続いていってほしいですね。もこっちが大学をどう過ごすのか見てみたいんですが、どうでしょうか。


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Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

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