THOUSAND EYES  『DAY OF SALVATION』 感想

〇前書き
待ちに待った「THOUSAND EYES」の約2年半ぶりの新譜です。「THOUSAND EYES」は日本のメロデス(メロディック・デスメタル。メロディー重視のメタルのこと)バンドで、これが3枚目のアルバムとなります。首を長くして待った甲斐もあって、素晴らしいクオリティの名盤として仕上がっていました。当然、捨て曲は一つもなく、しばらくはこれ1枚で十分戦えるんじゃないか、と思えるくらいの完成度。発売されてから一週間経ちますが、この一週間はこのアルバム以外聞いてません。今まで聞いてきたメロデスの中でも10指には入りそうなくらい気に入っています。
ライナーノーツがまたとてもよく、普段あまり音楽系の文章は読まないような人間でも、最後まで読み通せてしまうくらいよかった。「常にポジティブでいられる人は素晴らしい。しかし、そうでない人も大勢いる。それはKOUTAであり僕であり、今これを読んでいるあなただ。」ということで、ちょっとメタルが気になっていて、何か試しに聞いてみたい、と思ったことのある人にもオススメしたい1枚。メタルは暴力的な人とか野蛮な人が聞くものと思われがちですが、感受性が強くて、日常的に鬱屈していて、でもあまり気が強くなくて、言いたいことを言う相手もいない、というような人にも向いています。


〇1曲ごとの感想
・M1「Dawn Of Despair」、M2「Day Of Salvation」
イントラから続くタイトルチューン。中盤までは「安心のTHOUSAND EYES」という曲調で、THOUSAND EYESに求めているいつものエッセンスがきちんとあってよしよしと思いつつも、反面そこまでの新鮮味は感じなかった。ただ、曲の終盤になるとこれまでにはなかった新たなフレーズが感じられて、ちょっとだけ「ん?」となった。その頭をよぎった違和感は、余韻を残しながら次の曲に引き継がれていき、アルバム最後で完全に昇華させられる。一周してから聞き直すと、一発目としてふさわしい曲だったように思う。

・M3「Dead Again」
ブレインドリル感のある爆走チューンで、凶悪さは随一。少しカオティックな方向に足を踏み込んできたな、という印象もある。Dirしかり、複雑さやとっつきずらさを取り入れていくことには難しさもあると思うが、こういうテクニカルな曲もエッセンスとしては悪くない。

・M4「Lost Forever」
これまでにはあまりなかったミドルテンポの叙情さを押し出したメロ重視のチューン。ギターフレーズが哀愁を振りまいていて、これまたいい。つんのめるようなギターソロがたまらない。慟哭の中に混じる、そこはかとない哀切が本当に好み。決して日和ったわけではなく、あくまでも激しさの中にある一つの側面、みたいな。

・M5「Cold Blood」
一つ箸休めという感じでM4から続く一曲。もちろん悪い意味ではなく、捨て曲ということではない。正統派なHR/HM系統の曲であり、落ち着きのある曲調が逸る心を静めてくれる。当然そういう意図で配置しているのだろうし、狙い通りに機能していると思う。

・M6「Death Illusion」
出だしから畳みかかけるようなブラストとそれに続く咆哮が暴力的なまでに絶望を訴えかけてくる名曲。これ以上ないくらい攻撃的なのに、メロがあまりにも美しすぎる。気づけば頭を振っているし、思わず一緒に叫びたくなる。

・M7「Final Reign」
これぞデスラッシュ。ゴリゴリのリフと胸を抉るような透明感すらあるギターソロとのギャップが凄い。込められた激情が苦しくて、聞き終わった後には思わずため息が出てしまう。本当に待たされてよかった……。これだけいい曲が聞けるのなら、2年待つのなんて全く苦じゃない。

・M8「Astral Skies」
高めに高められた昂ぶりをおさめるための休憩曲。だが、これまた普通のミドルテンポ曲ではなく、練られた構成が実に聞かせてくれる。光と影、陰と陽、明と暗、ハイテンポに暴走する曲があるからこそ、この曲もまた存在感を放っている。

・M9「Dread My Brain」
特に新境地を感じさせた実験的な一曲。激しさよりもむしろ妖しさが先立っていて、アルバムのバリエーションを広げる一役を担っている。あまりカオティック/アバンギャルド方面に行かれてすぎても困ってしまうが、そのつもりがあるならこの方向性にも少しずつ挑戦していってほしい。

・M10「Rampage Tyrant」
ギターソロ後の一瞬だけ聞けるメロウなアコギ(でいいんですよね……?)の一節に続くドラマティックな流れが思わず昇天しそうになるくらい美しい。苦しい人生の中に垣間見える一筋の光を感じさせ、絶望の中の希望、希望の後にまた続く絶望を見事に表現しきっている。まさにデスラッシュメサイア。緩急極まった構成に脱帽。

・M11「Devastated Moment」
今まで聞いてきた音楽の中でも最高峰の一曲。One Thousand Eyesを超える曲は出ないだろうと思っていたのに、あっさりとハードルを越えてきた。おもわず涙ぐんでしまうくらいに叙情的かつ攻撃的なアンサンブルが病んだ心を浄化していく。このまま延々と聞き続けていたいと思ってしまうような、どこか懐かしさすらある陶然たるメロディー。時折感じる和テイストなフレーズ。退廃感と終わりを感じさせるギター。すべてが素晴らしい。過去最高級に好みといっても過言ではない出来栄えであり、なんというか、もう言葉がない。実はそこまでのハイテンポな曲ではなく、ミドルテンポくらいの曲なのだが、アルバム終盤でのたるみは微塵も感じない。聞けば聞くほどに味が出てくる名曲。


〇特典のライブDVD
THOUSAND EYESのライブを見たのは初めてだが(そもそもあまりライブは見ないが)、とても生演奏とは思えないくらいタイトなパフォーマンスで驚いた。時折走っているパートもあったように聞こえたが、生演奏としては十分すぎる完成度なのでは。演奏はもちろんだが、特に道元氏は生であれだけの声量が叩き出せるのは本当にすごいな……。生で聞いたらさぞかし凄まじい迫力だろう。特典としてただで観てしまってよいのか不安になるほどの内容で満足。


〇終わり
この先の人生でこれほどの名盤を聞けることはもう滅多に(もしかしたらもう二度と)ないんじゃないか、と思えるくらいお気に入りのアルバムとなりました。この文章ではあまり魅力が伝わらないだろうな、と思うと歯がゆい。音楽をひたすらヘビロテしていると、脳内でその曲のある歌メロがひたすらリフレインすることがあるのですが、このアルバムでは聞き終わった後にギターのメロディがずっとリフレインして、またその曲が聞きたくなってて仕方なくなる、という中毒みたいな症状が出てしまうようになったくらいです。そんなわけなので、今後もしばらく堪能し続けると思います。個人的にはメロデスの金字塔と言うべき一枚。


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