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蒼穹のファフナー EXODUS 17話 感想

「平和だったのは、たった半年……。将陵先輩たちの戦いには、それしか意味がなかったってこと……?」
「僕たちは常に、誰かが勝ち取った平和を譲ってもらっているんだ。たとえそれが、一日限りの平和だったとしても、僕は、その価値に感謝する」
―――蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT


これほどまでに胸を打つアニメは初めて見たかもしれない。当然、思い出補正があるし、これまでの時間的な積み重ねもある。だから、あまり公平な評価を下せている自信はないのだが、個人的にはここ数年のアニメ作品で一番良く出てきていると思う。少なくとも、同じ回を三度も通して見直したのは久しくない経験だった。

「今いるのは、俺とお前だけだ。生きよう。二人で。みんなの分も」
「それは、私が心のどこかで望んでしまった未来なんだ。本当の望みかもしれないけれど、私の探していた未来じゃない」
―――蒼穹のファフナー EXODUS


カノンの死はもちろん辛い。辛いが、なによりも胸を打ったのは、カノンが自分の望んでしまった未来を選ばなかったこと。自分よりも他の命を優先したということ。残酷なのは、カノンが自分にとっての幸福を、一騎と結ばれる未来を望んでいなかったわけでも、その選択を選びたくなかったわけでもないというところである。自分の幸福と全体の幸福、それらを天秤にかけた結果、後者が傾いた。自分一人で幸せになることよりも、島のみんなの希望を残すことを選んだ。

カノンの献身により、島と仲間は可能性と希望を得ることができた。その姿はROLの人知れず戦っていった先輩たちの姿を髣髴とさせる。個ではなく全体を優先したカノンの姿は美しい。自ら仲間の生の礎となった自己犠牲は讃えられて然るべきものだし、それはまさに利他的行動の極致と言えるだろう。ただ、私はその事実にあまり感動できなくて、カノンの選択を肯定しがたい気持ちの方が強かった。誰に非難されてもいいから、もう少し利己的であってほしかったと思ってしまうのだ。

「私は、その未来を選べない。お前といられる未来があった。それだけで、いいんだ……」
―――蒼穹のファフナー EXODUS


選ばないのではなく、選びたくないのではなく、ただただ選べない。カノンの最後の台詞は、最も美しい強がりだと思う。当然、それだけでいいはずがなかっただろう。そこにはきっと無念と後悔があるはずだ。完全に割り切っていたとは思えない。それでもカノンはそう虚勢を張った。その儚さがこれでもかというほどに胸を抉る。

もし、一騎が手を差し伸べるのではなく、その手を掴み、抱き寄せていたのなら、カノンの選択と結末は違ったのではないか。そうする一騎は、もはや一騎とはいえないのかもしれないが、そうなっていたのなら、カノンは自分を優先させることもできたのではないか。好きな人の手を振り払ってまで、全体を優先しただろうか。二人で生きる未来を選んでいたのではないか。どうしても、そんな可能性が脳裏をよぎる。

だが、それはもはや自分で選んだ未来とは言わない。選んだのではなく選ばされた未来だ。それでは人類軍にいた頃の、誰かの命令を鵜呑みにして、生を手放していた頃のカノンに逆戻りしてしまう。そうさせることを望むのは、私のエゴでしかない。他人の存在を否定せずに尊重するというのなら、カノンの選択を否定することはできない。他者との同化という選択を否定するのなら、カノンの選択を受け入れる必要がある。なぜなら、カノンの選択は大局的に見たときには正しく、決して間違った選択をしたわけではないからである。

自由意志に基づく選択が、必ずしも個々人の幸福を生み出すわけではないということ。その残酷なまでの答えを見せ付けられる。他人がいるから変わることができる。他人がいるから存在を望むことができる。そして他人がいるから、自らを優先する選択ができなくなる。他人の存在と選択の自由が、単一の幸福を認めない。カノンは島の仲間の存在がなければ、一騎と共に生きる二人だけの未来を選んだだろう。そして短いながらも幸福な時間を過ごすことができただろう。だが、島の仲間の存在がなければ、カノンは今そこにいるカノンにはなりえなかった。そもそもその選択の機会が生まれなかっただろう。その苦しさに、この作品の真価があると思う。

冲方丁の魔的なまでの才能を見せ付けられた素晴らしいシナリオだった。この先、一生記憶に残りそうな回である。
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