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セブンスコート 感想

 ノベルゲーム セブンスコートの感想です。製作はNovectacle。2013年エイプリルフール企画の一環として配布されたフリーゲームです。読者を楽しませるためのエンターテイメント作品なのかと思いきや、予想以上にボリュームがあり、その上しっかりとしたテーマ性も組み込まれていたという驚きの一品。

 内容紹介。まずはゲームが配布されているHPにひととおり目を通してみるのがよろしいかと思います。ファタモルガーナの館を既プレイであれば、どこかで見たようなハンドルネームのキャラが騒ぎ立てているのを見てニヤリとできるでしょうし、未プレイであればよく見る掲示板の一風景だと思われるのではないでしょうか。

 本編のストーリーは、リンクを張ったHP―ロワイヨムヘブンの常連だった奴らが、セブンスコートというゲームをダウンロードしてプレイしようとしたところ、ゲーム内世界に引きずりこまれ、誰かが用意したゲーム内ストーリーに付き合わされることになり、否応なくゲーム攻略を目指すことになる、というものになっています。このセブンスコートという作品は、このHPの管理人であるDark†Knight()が作成し配布されたゲーム、という立ち位置にあるため、HPで書かれていることはどれも重要な作外設定であり、ゲーム内要素の一つを兼ねています。ですので、実はこのHPも作品の延長線上にあり、HPを読まずに今作をプレイすると、作品の魅力が大幅に損なわれてしまう可能性があります。いわば作中作ならぬ作外作。このHPはセブンスコートの一部であり、一体不可分なものであることから、作品プレイ前にはぜひ一読されることをオススメします。

 以下ネタバレ。原作者によるファンフィクションかと思いきや、スターシステムを使った巧妙なミスリード狙いのシナリオであったことには驚かされました。頭からファタモルガーナの館と同じ設定が流用されていると思い込んでいた私は、すっかり騙されてしまいました。ミシェルは売れない同人ゲークリエイターになり、ネリーはいじめられっ子で引きこもりの空想癖持ちになり、メルは存在自体なかったことになり、ヤコポは資産家設定が消えてただの自尊心こじらせ系の引きこもりになり、マリーアはファタモルのミシェル同様のトランスセクシャルになり、獣の男は真性の殺人鬼になり、ポーリーンはやっぱり犠牲になり……。同じイラスト、同じ素材を使われているからこそ使用可能なトリックであり、製作者の着眼点は実に素晴らしい。

 WEB上のHPと作品そのものに密接な関連性を持たせたゲームはとても珍しく(というかやったことがない)、メタフィクションとしての発想そのものもさることながら、私が何故この作品から強い衝撃を受けたかというと、私はこのBBSにある情報だけでは、この作品の結末を読み取ることが出来なかったから、です。多くの人がそうであると思いますが、私はHPで書かれていた内容を、ネタだろうと思い込み、深く捉えずにさっと流してしまいました。何故ミシェルのレスが途中から滞るようになったのか、何故最後のアップデートはフェアリーハウスだったのか、その背景にある想いなど想像もせずに。

 ということは、私は現実に、WEB上の情報からは本質的なものを何も受け取れていないかもしれない、かもしれないのです。表面上の情報を捉えただけで満足しているんじゃないか、と製作者から直接問いかけられた気がして、ひやっとしました。当然のことですが、製作者には製作者の生活があり、今更といえば今更のことで、これは普段からきちんと認識しておかなければならないことですが、つい忘れがちなことであり、ただ自戒するばかりです。



 
 巧みに仕込まれた伏線と意欲的なテーマが高いレベルで混ざり合ったフリゲとは思えない作品。今作単品でも十分楽しめるような構造にはなっていますが、やはりどちらかといえば、ファタモルガーナの館をプレイしている人向けに作られた作品です。ファタモルガーナの館をクリアしてからの方がよりいっそう物語にのめり込める(思惑どおりに騙されることができる)と思いますので、お時間のある方はぜひファタモルガーナの館からやりましょう。

 あとこれは私見ですが、ファタモルガーナの館をやった時にも思いましたが、製作者は人と人が分かり合う/通じ合う瞬間の幸福を描くのが本当に上手だと思います。今作で描写し直されたミシェルとジゼルの関係は、傍目から見ていても、心底羨ましいと感じるものでした。
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