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魔王城 一限目~五限目

 魔王城は2008年12月から2010年7月の間にかけて発売されたシリーズものの連作作品です。全5巻で完結済み。私が今作を読んだのが最終巻の発売直後だったので、1巻から5巻まではほぼ一気に読みましたが、少しボリュームが物足りなかったと感じます。やることをきちんとやったという達成感よりも、駆け足で終わってしまったという印象が強い。ここで終わってしまうのは非常にもったいないと感じました。もっと長く続けられる作品だったと思います。もっとたくさん描写してほしいことがあったのに、5巻で終わらせるために色々なことがカットされてしまっているのではないでしょうか。まとめて読んだことでなおさらそう思うのかもしれませんが、これで終わってしまうのはとても残念です。気に入った作品だっただけにその想いはなお募ります。

 全体を通したストーリーを説明します。今作の世界観ですが、魔王という存在が英雄に倒された20年後の世界が舞台のファンタジーものです。世界から魔王という絶対悪的存在はいなくなったものの、ようやく平和になるのかと思えば、世界ではいまだ人同士の戦争が続いていて、相変わらず殺し合いは続いている。平和な世界にはほど遠いです。また、それとは別に、世界では魔王の子孫的な性質を持つ魔人という存在が生まれるようになり、その魔人は世界のあちこちで火種を生み続けている。まあ、ありがちといえばありがちな設定。主な登場人物は、軍人と魔人の子供たち。この作品は、軍人である主人公エイゴが、戦場での不始末が理由で現場から追いやられ、魔人たちの先生となることで始まります。テーマは、『種に対しての差別、無条件の嫌悪、そこから生まれていく相互理解』とわかりやすく、畏怖される魔人の子達と一般の人々が、互いに少しずつ歩み寄っていく過程を描きます。 

 魔人の子たちはそれぞれが特異な能力を持っていて、一般人からは比べ物にならないほどの力を持っています。魔人たちは自分たちが普通とは違うことに対して非常に自覚的であり、大人たちから優しくしてもらえず、他人から迫害され続けていることに傷ついている。力が強いからといって、心までが強いわけではない。その一点について、彼らは普通の子供たちとまったく変わりません。エイゴは、そんな傷ついた子供たちに授業をし、互いの理解を進めていくように努力を重ねていきます。この、少しずつお互いの本質に気付き、理解を深め合っていく過程はわかりやすく描写されており、こういうところはこの作品でも特に好きなところです。

 物語後半はまさに王道な展開で、エイゴが象徴的な存在となり、魔人の子供たちを幸せにしようと奮闘します(ここはあまり多く語っても仕方ないので、詳細は省きます。気になった人はぜひ自分の目で確かめてください)。最後の展開はさすがに少し単純化しすぎじゃないだろうかとも思いましたが、子供たちが幸せになることは私としても望むところでしたし、大楕円に終わったことにはまったく不満がありません。むしろ、あの逆境的な環境から、よくここまで持ってきたと作者に拍手を送りたい。シリアスな物語は好きですが、やはり最後はどころかしらハッピーエンドで終わってほしいもの。バッドエンドで後味が悪い物語も嫌いじゃないですが、今作のカラーではなかったと思いますので、こういう形で収拾をつけたのはうれしく思います。

 以下では少し残念だった点を幾つか挙げます。まず、最初に犠牲になった魔人・ジュリアンの描写が少なすぎます。ジュリアンが最初に殺されてしまったことは重要な伏線だと思ってましたし、後々の軋轢の要因だと考えていましたが、すっかりスルーされたまま終わってしまいました。何回かジュリアンについて触れられたことはありましたが、具体的にどんな子であったかはほとんど触れられません。別にそのことで糾弾してほしかったわけではないんですが、この展開では死んでいったジュリアンがあまりにも報われないのではないでしょうか。ここだけはなんとかして補完してほしかった。

 また、それに関連することですが、それぞれの魔人たちの描写がかなり物足りないです。キャラ別にいうと、アプリールにばかり着目され、ほかの子が疎かにされていたように感じました。特にジャンは最初の巻が終わったあと、最終巻まで主だって話に関わってくることがほとんどありませんでしたので、かなり残念でした。彼は最年長であり、それ故の苦悩がたくさんあったと思うんですが……。もしエピソードが用意されていてのに、尺の都合上カットされてしまったのだとしたら、切ないことこの上ない。先ほど理解を深め合う過程の描写が好きだと書きましたが、あれをもっと丹念に行ってほしかった。子供たちとの交流をもっと読みたかったです。

 以上。好きな作品であることは間違いなく、短く纏まっているのでおすすめしやすい作品なんですが、やっぱり読み終わってみるとボリューム不足の印象が否めない。好きだからこその不満なので、ないものねだりに近いものがありますが、次回新作が出るならもう少しキャラクターの掘り下げをしてほしいと思います。そして可能であれば、今作の後日談か短編集を出してください。
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