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モンスター 感想

 百田尚樹著『モンスター』の感想です。幼少時代にモンスターと呼ばれた醜女が、風俗で体を売りながらお金を溜め、整形を繰り返して生まれ変わっていく話。そこに著者のカラーである(と私が考えている)題材の解説を織り込み、美しい・知性的と形容される顔つきとは具体的にどのようなものなのか、整形に関する専門的な知識を紹介してくれる作品です。これらがどこまで正しい知識なのかはわかりませんが、顔の造詣についての考察はとても興味深く感じました。

 ストーリーは上記の通りとてもわかりやすく直球であり、そこまで捻ったものではありません。それよりも私は整形というテーマに惹かれました。美しいものと醜いもの、綺麗さと汚さ、平均と個性。それぞれの重さと軽さ、切っても切れない人生との関わり。この作品で語られるテーマは、顔や容姿についての話だけではなく、人生、生き様といった普遍的な話でもあると感じました。物語ラストの展開は反応が大きく分かれそうであり、恐らく男女の性差によって感想は分かれるでしょうし、また自身の容姿が平均的か個性的かによっても異なるでしょう。ありのまま表面的に受け取れば、あまり読後感がいいものではありません。最後に付け加えられたエピソードがその印象を強くします。主観的に捉えれば、和子は自身の人生に満足して逝くことができたであろうと判断できますが、客観的に見れば、自身の真実を告白した後、誰にも見取られることなく亡骸を放置されたその最期は哀れで仕方ないものです。栄華を極めた彼女の人生の最盛期は、他者からの羨望に塗れていたでしょうが、その顛末は世界の平均値からすれば幸福な人生であったとは言いがたいでしょう。結局、彼女が心から分かり合えた人間は一人もいなかったのですから、あの告白も単なる自己満足でしかないと言う人もいるかもしれません。人の幸せはそれぞれですが、あの孤独な死が生きたいように生きたのだから幸せだったに違いない、と考える人は少数派でしょう。しかし、だからといって彼女の人生に他の道があったかどうかは疑わしく、工場のライン業を永遠に続けることが彼女の幸福に繋がったとも考えにくく、だから他の結末も上手く想像できません。いつかは彼女に光があったかもしれないけれど、そんな受動的な人生が幸福かは誰にもわからないわけで、やはりこの人生こそが彼女なりの幸福だったのではないか、と思います。

 勘違いされると嫌なのできちんと断っておきますが、あくまでこの作品の物語は極端な一例に過ぎません。彼女は彼女なりに積み重ねた辛い人生があったからこそ美に執着し拘泥しましたが、他の人には他の人なりに優先するものが当然あります。たとえばそれは家族だったり、恋人だったり、金だったり、地位だったり、名誉だったり、健康だったり、愛だったり、夢だったり、そして今作に登場する人間のように、自尊心からくる自己顕示欲だったりするでしょう。だからこの価値観が絶対ということはない。恐らくこの作品は意図的に美へと見入られた愚かしい人間だけを登場させており、恣意的にそれ以外の価値観を持つ人間を除外し、悪意的にセックスを求める男ばかり登場させています。もしも今作に盲目の人間がいたのなら話はまったく変わってきたはずです。その人物と和子が結びついてハッピーエンド、なんて展開はさすがにお粗末ですが、もう少し話に幅は持たせられたのではないかな、と思います。

 総評。改めて懐が深い作家だなと思わされた作品です。今まで読んできた作品テーマが短編連作・零戦・女王蜂ときて今度は整形。よくも毎度違うテーマを用意できるなと感心します。強すぎるフィクション性は多少気にかかるところですが、読みやすいので試しに読む分にはオススメできるかなと思う次第です。
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