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片道勇者 感想

 フリーゲーム『片道勇者』の感想です。開発はシルフェイドシリーズでおなじみのSilver Second。今回のジャンルはダンジョン探索型RPGで、風来のシレンやトルネコの大冒険、チョコボの不思議なダンジョンといったタイプと同じジャンルのいわゆるローグライクな作品です。ダンジョン探索型RPGのフリゲといえばらんだむダンジョンを思い浮かべる人もいるかと思いますが、らんダンは戦闘がエンカウント式のコマンド選択形式で戦闘が行われていたのに対し、片道勇者はマップ上にいる敵シンボルにそのまま行動をしかけるシームレス戦闘形式になっているため、片道勇者はより不思議なダンジョンシリーズのイメージと近いシステムになっています。らんダンが明確な目的なくひたすらダンジョンにもぐる作品だったのに対し、片道勇者にはゲームクリアの目標が用意されているところも二作で異なるポイントかと。

 ストーリーは現在進行で巨大な闇に飲み込まれつつある崩壊寸前の世界で勇者として登場したプレイヤーが世界を救うために旅へ出る、という至ってシンプルかつ王道な内容。ゲームの目的は魔王討伐であり、魔王を撃破することでいちおうゲームはクリアされるのですが、そのほかにも幾つかエンディングが用意されているため、一周クリアするだけでは今作を堪能することはできません。二周目からは強くてニューゲームも可能であり、基本的に周回プレイ推奨の作品となっています。登場するネームドキャラクターにはグラフィックや固有イベントが用意されていますが、主人公が無言キャラのためか、会話や掛け合いはやや少なめ。どちらかといえばゲーム性を売りにしている作品だと思いますので仕方ないことですが、やはり物足りなさを感じました。ゲームにキャラクター性を強く期待する人には肩透かしかもしれません。そういった意味では今時珍しいくらい硬派と言えます。仲間キャラは5~6人程度用意されている様子ですが、私は3人しか仲間に出来なかったので詳細不明です。

 ゲームシステムについて。今作の特徴を幾つか挙げていきます。まず一点が画面の自動スクロールです。不思議なダンジョンシリーズには階段がつきものですが、今作は広大な一続きの世界を旅するゲームであり、階層の概念は排除されています。その代わり用意されているのがマップの踏破率であり、常に世界を何キロ移動したかが表示されるシステムになっている。また、画面が1ターン(プレイヤーの行動)ごとに自動スクロールする仕組みになっており、随時画面左端が闇に飲み込まれ消滅していくため、強制的にマップが更新されていくという仕様も用意されています。世界観設定とシステムを見事に融合させたものであり、プレイヤーが敵との戦闘に巻き込まれてもたもたしていたり、欲を出してアイテム蒐集に走り画面スクロールから逃げ切れなくなったり、マップ上の障害物に阻まれてたりして闇に飲み込まれようものならそこでゲームオーバー。安全を求めるならどんどん右端に向かって行動していればまったく問題ないのですが、見てないマップがあれば埋めたくなってしまうのがマッパーの性であり、アイテムを見つければ拾いたくなるし、魔物を見つければ倒したくなるし、町を見つければ入りたくなるしで、ただ進んでいくだけでは満足できずについつい寄り道してしまうという実に絶妙なシステムになっています。またもう一つの特徴はゲーム攻略にあたり複数の職種が用意されているという点です。最初は3つのクラスのみ選択できる状態になっていますが、周回を重ねていくことで新たなクラスが開放されていきます。当然、それぞれのクラスにはそのクラスなりの特徴が用意されていますが、そこまで極端な個体差はないため、どのクラスにしても慎重な立ち回りをすれば無理なくクリアできる難易度になっています(難易度普通だったらですが)。一部不遇な扱いを受けているクラスもある気がしますがそこはご愛嬌、まあ愛があれば乗り切れるでしょう。そのほかには学園物語にも用意されていた自動アップデートをはじめ、それを利用した冒険マップの更新システム(今作では1日ごとに冒険できるワールドが変更されていきます。ワールドごとに少しずつ違う特性が用意されており、コレクター心を擽ります)、旅の途中で死んでしまった他の冒険者(=プレイヤー)からアイテムをもらえる、これまたネット接続を利用した霊魂システム(でいいんでしょうか)、レベルを消費することで自由にプレイヤーの能力を強化できる石版システム(これはプレイヤー救済機能っぽいので縛る人が多そうです)など、作品独自のシステムが多数用意されています。




 以下はプレイ後の雑感です。全職種で一通りクリアし終わり、勇者の最終難易度で最終エンドと思われるものを見たのでとりあえず満足しました。シリーズ恒例で今回もフォースは優遇気味なので、今作でも理術師はかなり強めのクラスだったかなと思います。祈りの杖拾ってからは好き勝手に無双できますし。ただ、ザコ戦は楽なかわりに隠しボス戦は結構シビアな闘いを強いられるし、また専用杖がないと行動を先読みしながらプレイする必要が出てくるため、若干落ち着きのあるプレイが求められるかもしれません。私のように通路を闇雲に走るまわるような人にはあまり向いていない。特にマップ踏破が2000キロを越えたあたりからは敵の攻撃を一撃食らうだけで瀕死になるため、覚醒が切れているとどれだけレベルを挙げてても油断すれば即死亡、みたいな展開もありえます。そこらへんはバランスが取れていたかなと。勇者はその職種名からしてなめプができるクラスなのかと思わせておいて、高難易度になればなるほど難しくなる仕様になっているのが面白い。高難易度だと前半魔王が出てきて操作ミスをすると炎一発で一撃死しますので全然笑えません。後半も操作をミスって側面攻撃を食らうとワンパンで即瀕死状態になるため気が抜けない緊張感のあるゲームプレイが楽しめました。

 仲間については王様・王女様・ネムリの3人のEDを見ましたが、それ以外の仲間にはそもそも会えていません。運が悪いのか何なのか、王女様はほとんどの世界で出てきましたが、他のキャラは登場すらしなかった。魔王も仲間になるっぽいのですが、条件がわからず諦めてしまいました。魔王の力を解放する部屋が関係していそうなんですが、3部屋分くらい開放しても何もなかったため断念。攻略サイトができるまで待つとします。

 攻略について私的なポイントを挙げておきます。まず攻略ポイントは倉庫を増築につぎ込みましょう。最初は特徴やクラス解放には使わず、どんどん倉庫につぎ込んでいくことをオススメします。特に特徴はとにかく、クラスの解放にポイントを使うことはあまりオススメしない。というのも、クラスはゲームプレイ中に特定の行動を取れば自動的に開放されていくからです。少し余裕ができてきたら何はともあれ荷物整理術を開放しておきたい。これを特徴欄につけておくと周回プレイが段違いで楽になります。あとは生存力・基本ステータスあたりを好みで挙げておけばそこそこ安心してプレイを楽しめるのではないかと。もしも石版を使うのであれば俊敏性と生命力を強化していけば間違いありません。筋力は装備で補えるし、フォースメインなら理術師の基本成長だけで十分まかなえます。装備品に関しては斧が圧倒的に強いです。上手いこと命中率増加のエンチャントがつけれれば怖いものなしなので積極的に狙ってみることをオススメします。ただし隠しボスは強力な弓がないとかなり辛いのでそこだけはご注意を。

 以下は実際にあればもっとよかったのにな・今後余裕があれば改善してほしいなという要望集。武具破壊仕様があるのならそれに対するメリットがあればよかったなあと(チョコボの不思議なダンジョンでいう羽システムみたいな)。ただ壊れるだけだともったいないが発動してなかなか使いづらい。FFでエリクサーが使えない人なら気持ちがわかるはず。攻略が進めば進むほど武器があまりがちになるので武具合成できるシステムはほしかった。マゼルンでも壷でもいいんですけど。武具の追加効果がランダム発生なのはいいんですがあまりにもチャントの偏りが激しかったような。特に剣の王の偏りはひどすぎる。密室部屋の中には多数の罠があってもよかったかなと。魔物には特殊効果持ちがもう少しいてもよかった。特殊効果が石投げ・倍速・炎だけっていうのは少し寂しかった。ということでプレイ中に感じたことを覚えている限り列挙しました。もちろんこれらはないものねだりですので、なくとも不満ってほどではありません。なにせこれはフリーゲームですので、これだけ楽しませてもらった時点で十分だといえます。


 いやしかし、それにしてもとても面白かったです。前から感じているのですが、ここはシェアゲームよりフリーゲームのほうが断トツで面白いと思います。限られたリソースで作られているからか、凝縮された面白みが詰まっている気がしてならない。まあ、お金を払ってないことで心理的な評価の敷居が低いのかもしれませんが……。冷静に見れば、シナリオ・ストーリー・キャラクターのボリュームはかなり薄いわけですし、ゲームに意味を求めるタイプの人にはあまり向いていないように思います。私の場合は元々風来のシレンのような黙々とゲーム性だけ楽しむ作品が好きな性分なので、そのことに対する不満がほとんど湧かなかったし、これで満足なのですが、そうではない人も多数いると思われます。そういう方は潔くほかの作品を探したほうがよいでしょう。

 ともあれ、純粋にゲーム性だけを楽しんで寝不足に陥ったのは久しぶりでした。一週間くらい4~5時間睡眠が続きました。朝起きたら目が充血していたなんていつ以来のことだったことか。ゲームに休憩挟まないで数時間ぶっつけでやり続けたのも久しぶりのことでした。それくらいはまったということです。一旦攻略はおいておくつもりですが、まだ完全にやりつくしたわけではないので、そのうち攻略サイトができてアップデートが落ち着いてきたら再プレイするつもりです。
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泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部 感想

 酒見賢一著『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』の感想です。有名な物語である三国志を著者独特のユーモアでかぶいていく痛快エッセイであり、著者入魂のギャグ小説であります。タイトルどおりシリーズものであり、この作品は三作目にあたる。スタイルとしては、三国志の有名エピソードに逐一ツッコミを入れたり、懐疑的な視点で注釈したり、たまに学術的視点で見解を述べたり、あれこれ揚げ足取ったりしながら楽しんでいく、というような内容です。世間一般で持たれているであろう三国志イメージ像はガンガン壊れていくため、初めて三国志に触れてみようという人にはあまりオススメできない。コーエーから出ているゲームをやったことがあるくらいの知識でもいいので、多少なりとも事前知識があったほうがよいかと。これを読んだせいで(著者のように)純粋に三国志を楽しめなくなった!と言われても責任は負えないのであしからず。

 物語は長阪の戦いで大敗した(よね?と思わず疑問を感じてしまうくらい敗戦ムードを感じられない)劉備一向と孔明が、快進撃を続けようとする曹操軍を止めるべく呉との同盟を結ぶため行動し始めるところからスタート。今回は三国志のエピソードでもかなり有名(だと思う)な赤壁の戦いがメインとなっており、物語のフォーカスは呉軍の中心人物である周喩にあてられています。蜀漢軍が充電期間に入っていることもあり、今回の舞台はほとんどが呉軍メインになります。個人的に今作は劉備一向の破天荒っぷりを楽しむ作品だと思っており、やんちゃが控えられている参部ではハチャメチャ度低めだったため、少し物足りなく感じましたが(まあ張飛・超雲は何気に2対2万みたいな全く信じられない戦いを繰り広げてますが、なにせこの程度の活躍は地味で目立たないのが三国志であります)、周喩をはじめとする呉軍勢のキャラ造詣が面白かったからよしとします。呉と蜀の同盟話のやり取りは関西やくざと関東やくざの縄張り争いみたいな感じで面白かった。今回は周喩に花を持たせてやったのか、孔明の活躍は控えめですが、うさんくさい屁理屈で呉軍を煙にまいたり、あやしげな術で風を呼んだり、いつものように宇宙の話をしたり、変態っぽさは健在であったので十分満足しました。

 それにしても作者は孔明と同じくらい超雲が好きなんじゃなかろうか、と感じられるくらい超雲の活躍が多いですね。孔明に対する(少し歪んでる)愛は疑いようもないとして、超雲もちょっと優遇されすぎなんじゃないかと。他の主要人物には軒並み好感度減少イベントが用意されているのに、超雲はたくさん活躍の場が与えられてるわ、なんだかんだで(そこそこ)好青年だわ、向かうところ敵なしだわでいいとこ取りです。それに比べると周喩の小物臭といったら、見ていて悲しくなってきます。序盤こそまだ呉軍幹部としての威厳とカリスマに溢れているものの、孔明が絡み始めてから気運が急転直下、何かにつけては孔明への殺意に駆られる変態暴走野郎に早代わりしています。美男子で名高い美周郎も著者(と孔明)の手にかかればこんな風になってしまうのか……と何かしみじみしてしまいました。



 孔明への不滅の愛に溢れる妙にひねくれた歴史解釈が面白い三国志エッセイ。真面目でお堅い三国志に疲れている人はぜひ一読を。少し変わった三国志があなたを待っています。

OUT OF CONTROL 感想

 冲方丁著『OUT OF CONTROL』の感想です。短編集ということであり、そこまで楽しみにしていなかったのですが、思った以上に多種多様な内容が詰め込められており、想像以上に楽しませてもらいました。

 全7編の短編について軽くあらすじを説明します。『スタンド・アウト』は幼少期を外国で過ごしたために、自分が使用する言語に戸惑いを感じている少年を主人公に据えた話で、彼が小説を投稿しようとするまでの顛末を描いた話。幼少時代を外国で暮らした著者自身の人生経験をモチーフにして作られているようですが、その点はカドカワから出ている冲方丁のムックである程度把握できていたので、個人的には少し刺激が足りなかったです。もちろんフィクションであることを前提に読むべきなんですが、そのことを加味して考えてもあまり目新しさはなかったかなと。ただ、書き出しの部分は結構印象に残りました。『まあこ』は友人が作ったダッチワイフの髪を切ってほしいと依頼された美容師が、そのダッチワイフに魅せられて破滅していく話。人形の髪が伸びるという設定は古典から親しまれていて珍しくないものなのですが、その対象が日本人形や雛人形からダッチワイフに離れたというだけでとても生々しく、禍々しくなっています。いや、ただ単に後ろ暗い気持ちがあるだけなのかもしれませんけど。ダッチワイフとそのモデルとなった人物関連性が非常に上手く構築されていました。『箱』は精神に失調をきたして自殺した友人が残した膨大な数の空箱をオークションで売ろうとする話。箱を売ろうとした同僚たち3人はその最中に一種の恐怖体験をし、彼らも友人同様狂気に蝕まれおかしくなってしまう、という物語です。最後の一文のそっけなさにぞっとしました。『日本改暦事情』は天地明察の原型とされる短編で、なるほど天地明察から遊びの部分を取り払ったような内容になっています。主要登場人物と主人公の渋川春海が改暦のために四苦八苦するという物語の展開は同じですが、幾人か登場していないキャラクターが存在しますし、カットされているエピソードも多々あります。2つのどちらが面白いかといえばもちろん天地明察に天秤が傾きますので、この短編で興味を持った方はぜひ天地明察も読みましょう。『デストピア』は少年が街中で武器を持って暴れるというあまり冲方丁らしからぬ(といったら失礼でしょうか)話。少し屈折した青春小説という感じに捉えられないこともなく、意外性を感じながら読みました。『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』は近未来を舞台にしたコラム風味のSF。著者自身の結婚生活から生じている実体験も幾つかあるように見受けられ、ところどころでニヤリとしながら読みました。死産率0%の社会、胎児に第二の臓器たる燦臓の遺伝子を植えつけることで飛躍的に増大する寿命、自然を克服した生命などなど、興味深いテーマが述べられています。アンチ・抗うという言葉に反応する妊婦の姿も面白い。『OUT OF CONTROL』は著者(の分身)の不思議体験を小説にした話。ところどころで自身の作品から印象的な台詞を引っ張ってきており、自主的なパロディともいます(死んだほうがいい/なーんか世界とか救いてぇ/あなたはそこにいますか?)。タイトルは物語が作者の管理外にあること、自分の作品世界の暴走を意図しているのかなと。著者は精神的に追い詰められると失踪したり旅に出たりするらしいので、その際に(精神が)異世界に飛んでいてもおかしくないのではないか、なんて想像したりしました。

 どれも軒並み高い水準でまとめられていたのですが、中でも『まあこ』と『箱』のホラーコンセプトの2作は特に光っていたかと。ホラーという枠組(制限)があるためなのか、短いながらもきっちりとまとめられており、どちらも秀逸な結末が用意されているのが素晴らしい。特に何も考えないで読んでいたので、(一応ネタバレなので非表示)真亜心→真悪のトリックには全く気づきませんでしたし、本当に存在するのかもわからない「分割療法」で心を病んでいき友人と同じ末路を辿るという結末にはぞくぞくさせられました。ネタバレ終わり。

 良質な短編集です。予想よりも遥かに楽しめたことが出来、著者の作品が持つ特有の破滅感や虚無感を堪能できました。今後はシュピーゲルとアノニマス両方に動きがあるらしいので、そちらも大いに楽しみなのですが、まずは8月・9月に出るらしいもらい泣きと光圀伝を心待ちにしたいと思います。どちらも全く内容を調べていないので、どんな物語なのか楽しみです。

銃 火 感想

 中村文則著『銃』の感想です。ある雨の日に銃を拾った男の日常が少しずつ崩壊していき致命的な破滅へと至る話。暴力を体現した冷徹な殺人道具に取り憑かれ、その銃への狂おしいほどの愛と執着からついに抜け出せなかった男の物語となります。

 ストーリーはとてもシンプルで、淡白な過去形の独白が多いのが特徴的です。拾った銃のことだけを考えて生きる(たまにセックスのことも考えてますが)男の世間への無関心と私生活の無味乾燥ぶりを淡々と描写していきます。一見して他者とのコミュニケーション不全を起こしていそうな内面描写なのですが、随所の会話シーンから推定するにこの男はかなり砕けた調子で他者と接しており、それなりに人当たりのよいキャラとして人間関係を結び、それなりの地位を確立させて社会に溶け込んでしまっています。内面から想像されるイメージ像との乖離は男の異質な人間性を否応なく意識させ、そんな人間が社会に紛れ込んで平然と生活をしているという描写に作者の不信を感じじさせます。会話ができるからといって、その人間の内面がまともであるとは限らない、というように。

 主目的だった短編・火は、これまた中村文則らしく胸糞の悪い代物でした。30P程度の短編であり、さくっと読めるのですが、その分陰鬱なエピソードが凝縮されて詰め込まれており、読後感は最悪に近いものがあります。最後の一文が多少は救いになっている……かな?内容としては、幼い頃に家を燃やして両親を亡くした女が、先生と呼ばれる人物に自身の人生を告白しながらカウンセリング(と思われる)を受けている様子を描写していく話になっています。学校ではいじめをうけ、結婚相手からは浮気され、離婚してからは売春をしながら借金生活を送り、最後には産んだ子供をも売りに出すという極めて救いのない物語です。



 表題作については既読の作品であり、未収録の短編を読むために購入、数年ぶりに読み直しましたが、このタイミングで読み直してよかったと思います。当時、私が受けた衝撃はそのままそこにありました。私が銃を読んだときに感じた衝撃は、果たして私が同じように銃を拾ったとき、同じことをするのかしないのか、その答えが出なかった点にありますが、未だにその答えは出ませんでした。何年経っても成長していないことに呆れつつ、改めて自分の立ち位置を再認識することができたのは有意義だったと思います。

 少し気になるのは、ほかの人は今作を読み終わった時、最後のシーンをどう思うのかということです。自身と同じような感想を持っている人ばかりなのは恐ろしいし、理解を放棄されてしまうのもそれはそれで恐ろしいのですが、ほかの皆さんはどう思うのか。自身と照らし合わせたりしないのか、そもそも銃なんて拾わないで警察に通報するという価値観が普遍的なのか。この作品に共感するとしたら、いったいどんなところに共感するのか。考えても詮無いことですが、想像を禁じえません。


 最近中村文則の作品を読み始めたという人は、ぜひ今作も読んで現在と過去の作風の違いを感じてほしいと思います。近年刊行された著者の作品群とは比べ物にならないくらい強い虚無感に面食らうのか、やはりこういう作品を書く人だったのかという認識を得るのかはわかりませんが、著者の作品に少なからず魅力を感じている人なら一読の価値があるとオススメできます。
プロフィール

SAIN455

Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

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