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夢の上 1~3巻(完結) 感想

 C・NOVELSファンタジアから発売中の『夢の上』 1~3巻 の感想です。作者は多崎礼。名前は知りながら、なかなか手を出す機会がなく読まずじまいになっていた作者のひとりでしたが、ようやく手を出しました。先に読んだ同著の煌夜祭もとても私好みで面白かったため、今作にも期待を寄せて取り掛かりました。
 ついでなのでいちおう煌夜祭のストーリーも説明しておきますと、二人の語り部がそれぞれ把握している『魔物の物語』を交互に話し合っていく様を描いた短編連作です。あまり興味をそそられない粗筋ですが、いざ読んでみると意味深長で含みのある展開にすぐ引き込まれました。特に物語終盤の収束っぷりにはなかなかのカタルシスがあります。

 で、夢の上。ストーリー。夢を閉じ込めた水晶を売り歩く商人と、どこかの国の王様の二人で、水晶に閉じ込められた夢を眺めていく、という話。煌夜祭同様、一篇毎に完結したエピソードが書かれており、計6人の語り手たちによる中篇連作となっています。エピソード的には紅輝晶と闇輝晶が特にお気に入りです。紅輝晶では胸に秘めた暗い激情が明らかにされ、闇輝晶では前半全く登場しなかったキャラが実は舞台裏に存在していたことを描きます。同じ場面を違う視点から見るという多視点構造を取っているので、同じようなシーンを何度か読み直すことになり、新鮮味が薄れる部分もありますが、それぞれの視点に立つことで見えてくるものが変わってきて、そのおかげで新たに発見する点もあったため、だれを感じることはありませんでした。多視点構造を丁寧に生かした構成になっていたと思います。
 キャラについてはアライスが最後まで好きになれませんでした。決して悪い奴じゃないというか、むしろ不幸なキャラなんですが、いつまで経っても『自分勝手』というイメージが抜け切れず、いまいちすっきりしませんでした。アライス視点の物語をみても、ああやっぱりこいつはこういう行動原理で行動していたんだなあ、という以上のことを感じず、あまり株が上がらなかった。もちろん、父に認められたいっていう欲求はわからないでもないですが、人間的な魅力を感じさせる要因にはならず。まあ、他のキャラが言うとおり、自分のことを考えて行動できるが故に、他人の原動力になれた、ってことだったのかもしれません。最後の「貴方は今までずっと、夢の上を歩いてきたのですよ」という台詞があったおかげで、少しだけ肯定的になれましたかね。たくさんの下積があったからこそ、この台詞が映えていました。実際、最後の方になればなるほど、翠輝晶の話なんかは、かなりそっけない扱いになってますが、間違いなくあの人達の話は影にあったわけで、いわば脇役の話を疎かにしなかったことは評価したいところです。あれはほとんどの人達にとって、取るに足らないエピソードですが、アライスはその夢の上を歩いている、と結ぶんだ終わり方は印象的であり、感動的でした。

 総評。地味ながらも緻密に作り上げられたファンタジー小説。実に私の趣味と合致した作品でした。この作者の作品は今後も追い続けたいと思います。
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少女不十分 感想

 講談社ノベルスより発売中の少女不十分の感想です。著者は化物語で有名な西尾維新。同シリーズの偽物語・傷物語はアニメ化・映画化が決まっており絶好調の中、いわゆるセカンドシーズンも書きながらの新作となりました。

 内容。目の前で友達が事故に逢っているにも関わらず、プレイ中のゲームをセーブしてから泣き出すような異常な女の子を目撃した主人公が、その少女(小学生)に刃物で脅されてついつい拉致監禁されてしまう、というようなストーリーです。まとめると、少女に監禁された青年が何かうだうだ言い訳しながら、閉じこめられる状況を満喫しつつだらだらとしている話。ツッコミところ満載ですが、そこはなんとなくスルーされます。実際主人公はいつでも脱出できるような状況にありながらも、理由になるんだかならないんだか、よくわからない理由で脱出せず監禁状況に甘んじているので、直截的に言えば、少女に虐められることに本能的な喜びを感じるロリコン野郎だとしか思えないキャラクターとなっております。西尾維新の趣味が爆発した結果といえましょう。まあ、作品的には物語にかこつけた自分語りみたいな内容であり、今作においてはストーリーなんて別になければないで構わないようなものだと思うので、これでいいっちゃいいんでしょうが、やはり冷静に考えると色々と設定に無茶があります。
 で、じゃあ何が今作のメインは何なのかというと、心情描写です。今作は現在作家の主人公が、過去の体験を思い出しながら語っていくという展開で、当時の自分はこうだった、みたいな回想が大分を占めています。戯言シリーズはいーちゃんの自分語りがメインだったことを思えば、確かに原点回帰といえなくもないのですが、問題なのはその自己回想が読んでてあまり面白くなかった、むしろ退屈だった、ということですね。こういう作品は一人称の私に魅力を感じるかどうかが一つの肝だと思いますが、今作の私には全く魅力を感じなかったのは大きな誤算であり、マイナス点でした。私変わってるでしょ?とでも言いたげな文章が鼻につくうえ、自意識過剰に語られる文章がクドく感じられて仕方なかった。それに、今作が随想録・回想録的なスタンスのため仕方ないんでしょうが、逐一一つのシーンに解説・説明が入って場面が止まってしまうため、とにかくテンポが悪いこと甚だしかった。化物語のような、テンポのよい掛け合いを期待しているとまず裏切られます。

 そんなわけなので、全体的にはマイナス印象なのですが、これはよかったと感じたところがないわけではないので、そこにも言及しておきます。作中で述べられていることが西尾維新の心情吐露なのかどうかはさておいて、読者に主人公と作者があたかも同一人物のように錯覚させ、メタフィクション的な感動を生もうとしたところは評価したいと思います。何を言っているか説明しますと、作中では、主人公がなぜ作家業を営んでいるか?ということに対して、少女に物語を見せるためだという答えが提示されました。もちろん作者と主人公は別人ですが(一部は実体験の可能性があるとはいえ、さすがに少女に監禁されたって過去はないですよね?)、この答えはまるで西尾維新の作家活動における行動原理が告白されたようであり、かつ現状の西尾維新がなぜこれほどまでに書くのか?ということに対して、答え(のようなもの)が提示されたように感じられ、ある種の納得感が得られたわけです。作者(≒主人公)に対して、共感を集める手法としては最大限のものだと思いました。欠点はここで深い共感を覚えるのはこれまでずっと着いてきた読者がほとんどだということと、これから先はもう二度と使えない手法だということですが、そこに着眼点を持ったのは素晴らしいと思います。帯の「この本を書くのに、10年かかった」というコピーもあながち嘘ではないというか、ただ単に10年前だとこのギミックは物理的に使えなかっただけじゃねえか、というわけで、この手法には素直に感心しました。

 総評。西尾維新作の私小説風味の何か。作者はこういう作品が書きたくて書いたのかもしれませんけど、しかしまあ途中まではとにかく読むのがしんどい作品でした。著者の作品で数ページ毎に作品を閉じながら読んだのはニンギョウがニンギョウ以来です。最後の『これまでの作家活動に対するまとめ』的な文章がなければ読後感もよくなかったと思います。実験的な作品だったんだか、どうなんだかわかりませんが、あんまりこういう作風が向いていると思えないので、今後は違う方向性で頑張ってほしいと思います。
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SAIN455

Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

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