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人狼 JIN-ROH

 人狼 JIN-ROHとは、2000年に発表された作品で、戦後(より詳しくいうと、高度経済成長時~後あたり)現在とは違う未来を迎えた架空の日本を舞台に描かれるアニメーション作品です。公開から既に10年を経過していますので、それなりに古さを感じるところもありますが、しかし今見ても十分楽しめる内容でした。

 今作の中心となるのは首都警という架空の組織です。首都警とは、戦後日本の治安維持を目的に結成された組織で、主人公はその中でも戦闘を目的とする特機隊という部署に配属されています。この作品は、その主人公がセクトと呼ばれる集団が起こしたある事件に巻き込まれることで話が進んでいきます。

 この設定からも想像できるかもしれませんが、今作はかなり世界観が練り込まれています(同一世界観の話もいくつかあるようです)。内密に作りこまれた設定が好きな人はそれだけで充実感を得られそうです。しかし、その世界観設定に反して、視聴者に提供される情報量がそこまで多くなかった(冒頭に約3分もの間世界観設定がありますが、この後に具体的な設定説明はさほどされません。世界観設定がかなり練り込まれているだろうことは予想できますが、どちらかといえばそれは想像力を書き立てるための余地に過ぎません)ので、ここはかなりよかった点ではないかと思っています。おかげですんなりと作中のドラマに熱中できましたし、しかもその世界観は邪魔にならない程度に作品を彩り、より奥深いものに仕上げていました。

 そんな今作品ですが、第一印象から一言で表現するなら、ハードボイルドという言葉がもっとも相応しいのではないかと。渋いといってもよいでしょう。舞台が舞台なので、たくさん人が殺され死んでいくお話ではありますが、そこにはよくみかける派手な演出はありません。登場人物人は銃に撃たれれば容赦なく死ぬし、死に方も到底綺麗なものではない。正直に言えばその姿は見ていてあまり心地よいものではありません。超能力などの現実離れした設定もないし、登場する人物はみな人間です。また、諜報戦やゲリラ活動といった生々しく戦争をイメージされる要素が扱われているため、作品全体に陰鬱な印象が強いです。

 話の展開ですが、主人公が警察機構に組み込まれているという設定から、てっきり事件を解決していく話かドンパチやる話を想像していましたが、いざ話が始まってみるとそういう方向には進みません。主人公は最初の事件がきっかけで早々に前線を離脱してしまうので、どちらかといえば戦士の休日みたいな印象の方が強かった。当然、それが悪いという話ではなく、現場から離れても主人公はきちんと話の中心にいるし、きっちり伏線を張りながら話を進めているため、シナリオに不満はありません。あまり多くはありませんでしたが、銃撃戦の時に見られるプロテクトギア(特機隊に支給されているパワードスーツのようなもの)のデザインはカッコいいの一言に尽きますし、アクションシーンにも不満なし。もっと見せ場が多くてもよかった気がしますが、少ないからこそ映えるということもあります。

 それでは今作はどのような話なのかというと、恋愛物です。大人の男と女の話です。作中で赤ずきんがモチーフに使われていますので、なんとなく結末は予想できるかもしれませんが、悲恋物です。色っぽいシーンやらぶらぶいちゃいちゃするシーンはありません。もちろん、そのストイックさは私も気に入っているところですが、ここは冷たくいってしまうと地味だともいえるので、合わない人もいるでしょう。萌えが主流の時代とは合ってません。このあたりがもっとも『古い』と感じるところです。

 そもそも、今作の登場人物の3分の2以上は厳つい男たちです。可愛らしい女の子は出てきません。しかも登場する女性キャラの一人は最初に爆死しますし、もう一人は主人公に銃で撃たれて死にます(最後の場面で人狼の仲間が雨宮を狙っているシーンが映され、もしかしたら彼らが撃ったのかも?とも想像できますが、雨宮が撃たれている箇所と伏の銃から煙が出ているような描写があることからして、伏が撃ったということで間違いないかと思います。あのシーンは半田が保険をかけていた、という意味だと思われます)。昔の仲間にも裏切られます。ほとんど救いはありません。やっぱり暗いです。

 少しストーリーを説明しておきます。まず、主人公の伏は同期である辺見から罠にかけられます。目的は伏が所属している特機隊の機構に揺さぶりをかけるためです。そのために、辺見は雨宮という活動家の女性を伏に近づける。不祥事の発覚を狙ってのことですね。彼女は、最初のシーンで爆死した阿川という女性の姉を偽り伏に接近する。伏は阿川が自爆する前に排除することができず、隊を危険にさらした責任を求められるのですが、阿川をなぜ殺せなかったのかは答えが出ず、自問します。そんなときにこの2人が出会うわけです。裏設定がなければ、2人は恋に落ちて幸せになっていきそうなもんですが、やはりそう上手くはいきません。

 2人の関係に甘酸っぱいロマンス、みたいなものはなく、終始その描写は淡々としていました。もっと時間があれば何かが違ったかもしれませんが、辺見たちが牙をむいたことで、その未来も潰えてしまう。伏は狼として敵を排除しましたが、結果伏は雨宮を殺さなければならない状況に追い込まれ、最終的に自らの手で弓を引き、このお話の幕を下ろします。救いがないのは、伏が何をしなくても強制的に誰かが終わらせている、というところです。伏が辺見たちを排除しなかったら、別の手段で特機隊を狙ってきたでしょうし、最後のシーンでは伏が撃たなくても仲間が撃っています。伏の行動がなかったとしたら、結局何らかの不幸な結末があったということです。

 最後の場面で伏は何を想って雨宮を撃ったのか。伏は仲間が雨宮を狙っていることに気づいていたのか、知らなかったのか。また、雨宮はどうだったのか?その内面は、視聴者が想像するしかありません。言葉数が少ないこの作品には、そういった奥ゆかしさが少なからず存在します。全てを語ってしまう作品も、それはそれで悪くありませんが、私はそういった奥ゆかしさを好ましいと思います。
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悪の教典

 ホラー・青春小説・SF・ミステリと手広く手がける作家・貴志祐介の通算8冊目(上下巻は1冊でカウントしています)の新作。初めて著者の作品を読む人のために、過去作品を刊行順に一言二言の感想とともに紹介してきます。著者の作品を読了している方は読み飛ばしてください。また、詳しいストーリーが知りたければWikiへ、少しでも気になったら本屋へ行きましょう。


 デビュー作の『十三番目の人格ISOLA』は多重人格者をテーマにしたサスペンス小説です。著者の作品の中でもまだまだ荒削りな印象が強く、正直なところあまり内容を覚えていないのですが、確かな地力を感じさせる作品だったと記憶しています。

 2作目の『黒い家』は生命保険会社の暗部をテーマにした本格的なホラー小説です。執拗とも言える心理面の描写が素晴らしく、生きている人間の姿を生々しく描写しています。夏の日に読んで最後のシーンで心臓をびくつかせたのはいい思い出です。

 3作目の『天使の囀り』は前2作の良いところを抽出して練り込まれた著者のホラー作品集大成といえる作品です。あまり救いがある展開ではないのにも関わらず、ぐいぐい読ませていく魅力があります。ただし、多少のグロ描写があるため、あまり耐性がない人は注意。

 4作目の『クリムゾンの迷宮』は著者のこれまでの作風を生かしつつも新たな分野に挑戦した作品で、とてもゲーム的な小説です。内容は、あるゲームに巻き込まれた登場人物たちが、生き残るために武器やアイテムを利用して争いあうというもの。基本的な展開はサスペンスですが、今までの作品に比べると圧倒的にエンタメ性へと比重が傾いていて、そのおもしろさは途中で読み止めることが難しいほど。導入部で詰まることなく読めた人なら、最後まで一気に読んでしまうこと間違いなし。

 5作目の『青の炎』は、高校生の少年が家族と幸せになるために完全犯罪をもくろむという犯人視点の倒叙もの。これまでの小説とは一線を画しており、著者の器用さに唸らされます。相変わらずリーダビリティはとても高いですが、主人公は青少年特有の自意識を持っているためにかなり自己犠牲が強く、それ故にエゴもかなり強いので、そこが鼻につく人もいるかも。

 6作目の『硝子のハンマー』は元空巣の防犯屋と女弁護士が主人公のミステリ。著者の作品の中でももっともクセがない作品かと。なお、8作目の『狐火の家』は今作の続編的な作品となっています。

 7作目の『新世界より』は旧人類が滅んだ後エスパー能力を持った新人類が世界を支配する近未来を舞台にした長編SFです(ハードカバー版は上下巻、ノベルス版は1冊に纏められています)。著者の思考実験とも取れるような作品で、現在の価値観と新世界の価値観の対比が楽しめる。キーワードは想像力。また、バケネズミというキャラクターが登場するところも忘れてはならない。読者が彼らをどのように捉えるかによって、この作品の読後感は大きく変わると思います。

 以上が著者の過去作品紹介です。私が特に勧めたいのは『クリムゾンの迷宮』『青の炎』『新世界より』の三作品。当然嗜好にもよりますが、『クリムゾンの迷宮』はゲームやラノべが好きな人で、且つその中でも特に心理戦を好む方に、『青の炎』は暗い影を持つアンニュイな男主人公が好きという方に、『新世界より』は純粋に面白い本が読みたい方に向いているかと。基本的には全て水準以上の作品ばかりですので、一つが気に入ったらほかの作品も読んでみることを強くお勧めします。


 以下より悪の教典の内容紹介と感想となります。この先はシナリオのネタバレを含みますのでご注意ください。

 今作は私立高校の教師を勤める蓮実という人物が主人公です。上巻ではこの一見まともに見える蓮実という人物の異常性を徐々に描いていきます。蓮実というキャラの人物像がどのようなものなのか、蓮実の周囲で発生する事件を通して、少しずつ読者の理解を進めさせていく。下巻では自身の行動が原因で破綻してきた環境を、蓮実自ら破壊していくという展開です。ここまでくれば、蓮実の『悪』っぷりは十分理解できていると思います。

 蓮実という人物は、周囲の教師・生徒からの信頼も厚く、爽やかな英語教師として通っていますが、その実は冷酷無比の殺人者です(もっとも、蓮実から言わせれば『喜怒哀楽はあり、共感能力がないだけ』とのことですが)。最初は嫌悪感を抱かせるほどではありません。烏のくだりや、犬のくだりで『こいつちょっと変だな』程度の違和感は覚えるものの、それでもそこまで際立っておかしいという確信は持たせないし、生徒に対する態度からそれなりに好青年だと認識させられてしまう。このあたりは絶妙なバランス感覚で描写されています。

 当然、話が進んでいくごとに『こいつちょっと変だな』では済まなくなり、こいつはどうようもない異常者なのだと確信させられます。蓮実があっさり人を殺して、あっさり生徒と関係を持ち、息を吐くように嘘を吐き、平然と同僚を脅迫する姿には唖然とさせられますし、過去に殺している数が尋常ではないことが発覚する度に呆然とさせられます。こいつは一体何なのかと。しかも殺人の理由は大方が『あ、こいつ邪魔』程度のもので、普通なら殺人には到底至らないような動機です(普通なら、説得や脅迫といった展開もありえそうですが、そうはならない。蓮実にあるのは邪魔者は排除するという思考だけです)。思わず正気を疑いますが、蓮実は異常者でありながらも狂人ではないというのがおもしろいところでしょう。

 下巻で蓮実は自分の過去がばれそうになってしまい、そうなるくらいなら全員殺してしまおう!といういっそ清清しい思考で生徒達全員を虐殺する計画を立てます。あまりにもあっさりと。生徒を卒業させることが自分の最後の授業だとすら思っているあたり、薄ら寒い。

 蓮実はこの後の展開では、全てを殺し自分が捕まらないようにすること以外、何も考えていません。良心の呵責に苦しむ、という当たり前のシーンは一切存在しない。あまりにも淡々としているので、こちらの感覚が麻痺してきます。蓮実が異常者でありながらも狂人ではないということがよくわかるのがこういうところでしょう。一人殺しても二人殺しても同じだと、冷静に刑期のことを考えて殺人の方法を吟味しているところが心底恐ろしいです。他人を全てその他大勢として認識してしまうあたり、共感能力がないという供述にも頷けます。


 以上のように、今作は蓮実の人間性を考察していく作品です。読んでる間進める手が止まらず、最後まで一気読みしてしまったことからも、とても面白い作品だったことは間違いない、のですが、しかし幾つか不満点があります。

 不満点は大きく分けて2つ。

 1つがこの作品はあまり伏線が回収されていないのではないか、という点。作中には蓮実が過去を回想する場面がいくつかあり、その中に憂実という人物が登場します。彼女は中学生時代の同級生で、勉強ができない知恵遅れなのですが、唯一蓮実少年の異常性を見抜き、その上で関わりを持ちながらも蓮実から殺されなかったという稀有な人物でもあります。しかし、途中で彼女が自殺してしまったという事実がわかってから、ほぼ登場しません。確かに死んだキャラを登場させることは物理的に無理なんですが、しかしこれはあまりにももったいないというか、そっけない。憂実が蓮実に影響を与えた数少ない人間であることはまず間違いないわけですから、彼女を殺せなかった蓮実の内面をもっと考察してほしかった。それか、彼女が蓮実に与えた影響をもっと具体的に描写してほしかったところです。烏は伏線が回収されていないというよりも、途中まで意味ありげに出てきた割に、最後のほうではほぼ触れられていないのが気になります。メタファーとして利用しただけなのか、思考と記憶(フギンとムニンと読みます。蓮実が烏に名づけていた名前で、フギンは蓮実に殺されます)というそのままの意味で使われたのか、それとも私が読みきれていないだけなのか、最後までわかりませんでした。

 もう1つが下巻の展開そのものです。下巻では、蓮実がいかに生徒達を皆殺しにするかというところに主な焦点が当てられて、その膨大な分量のほぼ全てが殺人シーンに割り振られていました。リーダビリティの高さは徹頭徹尾維持されていましたが、前半の展開からすると、これだけ?という気分になる。もちろんつまらなかったのではなく、ぐいぐい読ませていく力は失われていないのですが、どうにも薄かった。ただ人が死ぬだけで、強烈な印象を与えるものがなかったといいますか。踏み込みが足りなかった、という感想が一番近いかも。

 私は、この作品は、後半場面で著者が描きたいものを描けていないのではないかと感じました。最初からパニック小説を書きたかったのなら別ですが、序盤の展開を見るにそうは思えない。なんらかの社会的なテーマを描こうとしていたのは間違いないはず。なのに、後半でそれを放棄してしまった印象がある。ただ単に描けなかったのか、それとも最初からこうする予定だったのか私にはわかりませんが、どうにも肩透かしといった具合でした。面白さとテーマ性を両立できる作家だと思いますので、正直に言ってやはり物足りない。

 また、下巻である生徒二人を殺したとき(あとでわかりますが、これはフェイクです)に、蓮実がきちんと生徒の顔を確認しなかったところに疑問が残る。何十人もの人間を殺してきて、思考が鈍ってきていたということも考えられますが、私でも入れ替わりを予想できるのに、蓮実が全く想像しなかったのはおかしいといわざるを得ない。今までの彼を見てきた限り、彼は異常者であり連続殺人者ですが、それにふさわしい冷酷無比でロジカルな思考を持っています。そんな人物がそのような甘い考えをするでしょうか(というか、危険なときに働くという野生の勘の設定はどうなったのか)。蓮実は途中からその場の勢いで行動するようになってしまっている。どうせなら、最後まで悪魔のように周到で冷静な手口を見せてほしかったところです。


 結論としては、エンタメ作品としてだけ見るなら十分面白かったのですが、貴志祐介ならではのテーマ性といいますか、深さがいま一つ足りなかった作品、といったところ。下巻いっぱい使われている殺人シーンは読み詰まることなく一気に読み終えましたし、とても面白かったことは間違いないのですが、幾つか納得できないところがあったのがとても残念。今回が貴志祐介の初体験であれば1も2もなくお勧めしますが、過去作品を読んでいる身としてはもう少し踏み込んでほしかった。それこそ、蓮実が捕まって終わりだとあまりにも普通の展開すぎます。この先にまだ何かがあればよかったのですが、終わってしまった作品にこれ以上を求めても仕方がないことですので、次回作を楽しみにして待っています。

はじめに

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全ての記事はSAIN455の主観的な感想であるため、全ての人に共感されるものではないことをご注意ください。
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SAIN455

Author:SAIN455
漫画、ラノベ、ゲームなどのネタバレ感想記事を書いています。ネタがあるときはコラムみたいなものも書きます。あとアマゾンアソシエイトに参加してます。以下定型文。「このブログはAmazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。」

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